拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 34

夕食を終えると、私たちは、庭に出た。
今日は晴天。
きっと、綺麗に花火が見えるだろう。


庭先に用意した椅子に座って、携帯電話を隣の台に乗せた。


「これは、あなた専用よ。私が作ったの。凄いでしょ?」


不出来な手作りの台に、彼は笑うかなって思っていたけれど、
とても喜んでくれた。


『これ俺の?作ってくれたの?凄いじゃん!』


そうして間も無くに、
花火大会、始まりの合図の音が鳴り響き、
やがて、夜空に、色とりどりの花が咲き始めた。


花火が始まると、私たちは、暫くの間、黙って空を眺めた。


隣に彼がいる。
これがどんなに幸せなことであるのか、
彼が生きて、側にいてくれた頃の私は、考えたこともなかった。
当たり前なんて、何処にもない。


あの頃の私が見ていた景色も、
今、私が見ているこの景色も、
どちらも奇跡だと思う。


彼が隣にいてくれることが、ただ、嬉しくて、
思わず、笑みが溢れてしまう。


私は、今、とても幸せだ。


『こうして一緒に、
花火が観られるだなんて、思わなかったよ。』


私よりも先に、彼は、そう言って、こちらを見て微笑んだ。


「うん。私もよ。」


私たちは、微笑み合いながら、再び、花火へと視線を移した。


彼と一緒に花火を観られることが、嬉しくて仕方がないままに、
実は、先ほどから、私が気になっているのは、
彼には内緒でこっそりと準備した、置き時計が示す時間だ。

 


あと5分

 


あと3分

 


午後8時。
彼へのサプライズの時間だ。


「ねぇ、あなた。
これから始まる花火はね、
私から、あなたへのプレゼントよ。」


画面の向こう側で、驚く顔をする彼に、笑って見せると、
早速、花火が打ち上がった。


今年の夏は、特別な夏だから、
絶対に忘れられない素敵な景色を、
彼にプレゼントしようと思ったの。


青色をベースとした盛大な速射連発花火、スターマインが始まった。


そうして、
一発ずつ打ち上がるのは、

 






 


更に、速射連発花火が打ち上がると、
それを彩るように、
小さく可愛らしいハート型が散りばめられた。


速射連発花火が最終を迎えると、
一際、高い場所で開くのは、
ピンク色の大きなハート型の花火だ。


夜空いっぱいに広がったハート型の花火は、
やがて、キラキラと星を散らした。


思わず息を飲み、瞬きをするのも忘れたままで、
夜空に降る星たちが、静かに消えるまでを見守った。


短い静寂の後、
次の花火が打ち上げられると、私は漸く、
自分が涙を流していたことに気が付いた。


そっと、彼の顔を覗いてみれば、
彼もまた、静かに涙を流しながら、空を見ていた。


「あなた。愛してる。」


小さく呟く私の声に、


『俺も。愛してるよ。』


静かな彼の声が聞こえた。

 

 

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