拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 37 -彼がいる世界より-

画面の向こう側、眠っている彼女を見つめた。

 

『辛い思いをさせて、悪かった。

でも、ちゃんと見ておきたかったんだ。

辛くても、前を向いて歩もうとするお前の姿を。

そうじゃないと・・・意味がないんだ。』

 

彼女の涙を拭い、頬に手を当ててみる。

俺は、何度こうして、彼女の涙を拭ってきただろう。

 

俺がこっちに来たばかりの頃は、危なっかしくて、

一時も目が離せなかった。

あれは、俺より、4つ年下だった彼女。

 

あれから、ゆっくりと、一歩ずつ前へと歩みながら、

時折、後ろを振り返り、涙を流していた彼女の側に、

俺はいつでも、寄り添ってきた。

 

俺と同じ年齢になった彼女。

ひとつ、ふたつと、俺よりも年上になっていった彼女。

俺は、全部の彼女を知っている。

 

側にいるよ

 

彼女には届かないと知りながら、

俺は、何度も彼女に語りかけながら、

こうして、涙を拭ってきた。

 

でも、今日の涙は、これまでとは違う。

彼女は、もう、大丈夫。

 

『俺は、いつでも側にいるよ。

だから、安心して、その夢を叶えておいで。』

 

眠っている彼女は、俺の声が聞こえたかのように、

微かに微笑んだ。

 

もうすぐで、8月8日が終わる。

 

初めて、俺に見せてくれた彼女の浴衣姿を、

しっかりと、目に焼き付ける。

 

俺が全部、覚えているからな。

絶対に、忘れないから。

 

通話残り時間、5秒前。

 

4

 

3

 

2

 

『愛してるよ。』

 

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