拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 39 -彼がいる世界より-

彼女の中の記憶を抹消し、時間を戻した後、

俺は、彼女のすぐ側で、目を覚ますまでを見守った。

 

目を覚ました彼女は、部屋中を見渡し、不思議そうな顔をした。

「あら、嫌だ。寝ちゃったのかしら。」

そんなことを呟きながら。

 

一見して、アプリで繋がる前と何も変わらない様子の彼女の姿を、

注意深く見守っていると、

彼女は、俺に、線香を立てて、手を合わせた。

 

「ねぇ、あなた。聞いて?

今ね、とても素敵な夢を見ていたのよ。

とても長い夢だった気がするけれど、あまりよく覚えていないの。

でもね、どこか、素敵な場所で、

あなたが雪を降らせてくれたことだけは、ハッキリと、覚えているわ。

ピンクとか、青とか、黄色とか、

色とりどりの雪を降らせてくれたのよ。

とても、素敵な夢だった。

私ね、夢の中で、あなたと過ごしながら、

やってみたいことを見つけたの。

なんだか、とても不思議ね。

でもね、これはきっと、あなたのお陰なのよ。

あなた。ありがとう。

私、頑張るね。」

 

俺に向かって、話してくれる彼女の声は、とても楽し気で、

思わず、俺まで、笑顔になりながら、彼女の話に頷いた。

 

後ろを向いて、泣いていた彼女は、もう此処にはいない。

今、彼女の瞳に映る景色は、

色鮮やかな景色が広がっているのだ。

 

嬉しそうにしている彼女に、そっと寄り添い、

彼女の髪を撫でると、何故か、涙が零れ落ちた。

それが何の涙であるのか、よく分からないままに、

俺は、涙を拭い、彼女を抱き締めた。

 

あれからの彼女は、いつでも前向きに頑張っている。

その証拠に、彼女の魂の輝きは、

これまでに見たことのないような素敵な色を放ち、

俺を驚かせた。

 

あれからも、変わらずに届く彼女からの手紙には、

希望に満ち溢れた素敵な想いが並んでいる。

 

何かに挑戦する時、年齢は、全く関係ない。

きっと、彼女は、この先もずっと、

何かに挑戦し続けるのだろう。