拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 40 -彼がいる世界より-

アプリでの繋がりを終了させること。

それは、こっち側での、祝いにあたる。

向こう側へ遺してきた人の、新しい出発を意味するからだ。

 

アプリを終了させる手続きに行った時には、

「おめでとうございます。」

そう祝福され、最後に、手渡されたのは、

アプリの制限時間を解除するチケットだった。

 

「素敵な時間を。」

そんな言葉と共に。

 

最後に過ごした彼女との時間は、本当に素敵な時間だった。

そして、あの日の彼女の笑顔は、

俺の中に、あるものを芽生えさせた。

 

・・・いや。本当は、彼女と過ごした日々の中で、

彼女は、俺の中に、種を植えてくれていたのかも知れない。

 

思わず、笑みが溢れてしまう。

 

アプリ【KANATA】で、俺と繋がりながら、

彼女が新たな夢を見つけたように、

俺も、こっちでやってみたいことを見つけた。

これは、俺の新たな挑戦だ。

 

向こう側で、彼女がワクワクとした毎日を送っているように、

俺もまた、こっち側で、ワクワクとした時間を過ごしている。

 

これには、アプリ【KANATA】のプロジェクトチームの皆も驚いていたが、

アプリを終了させた被験者の半数以上が、

新しい物事へ挑戦するようになった。

 

アプリ【KANATA】は、この世界へも、

素晴らしい風を吹かせることになったのだ。

 

虹花草が咲くこの場所に、彼女を連れてくる日は、

まだ、当分、先になるだろう。

 

いつか、彼女と此処で過ごしながら、

どんな素敵な夢を叶えたのか、

お互いに話し合う日が、とても楽しみだ。

 

彼女の驚いた顔。

楽しそうな顔。

膨れた顔。

アプリ【KANATA】で見せてくれた彼女の顔を順番に思い出せば、

俺を包み込むような柔らかな風が吹き、

ほら。

またひとつ。

彼女からの想いが届く。

 

今日の彼女も、とても素敵な時間を過ごしたようだ。

 

彼女からの想いをポケットに仕舞うと、

俺から、彼女への想いを風に乗せた。

 

『俺は、いつでも側にいるよ。』

 

 

 

 

 

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