拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

小坊主探検隊

あなたへ

 

あなたは、覚えていますか。

 

あの子が小学校に上がった頃に、あなたが始めた、

あの子と2人での自転車の旅。

それは、いつの頃からか、

小坊主探検隊と名付けられた男同士の旅でした。

 

探検から帰宅すると、探検日記なるものを作成した2人。

 

今日はどんな場所へ出掛けたのか、

あなたは地図を作成し、あの子はレポートを。

そうして、どんな場所へ出掛けたのかを、

楽しそうに、話して聞かせてくれましたね。

 

小坊主探検隊

 

背表紙に、そう書かれたファイルには、

1ページずつ、男同士の旅の物語が増えていきました。

 

きつい登り坂で、2人で必死に自転車を漕ぎながら、

人生には、楽なこともあれば、苦しいこともあるのだと、

あの子に教えてくれたあなた。

 

あの頃のあなたの言葉は、今も、あの子の胸に深く刻まれ、

時に、辛いことに遭遇しても、今は、苦しい時なのだと、

あの子は、逃げることなく、向き合うことが出来ています。

 

あなたとの男同士の旅の中で学んだ時間は、

あの子にとって、掛け替えのない時間でした。

 

幾度かの旅に出て、

あなたとの楽しかった時間を話して聞かせてくれたあの子ですが、

やがて、成長と共に、

野球やサッカーへと遊び方が変わっていきました。

そうして、我が家の小坊主探検隊は、静かに、解散したのでした。

 

止まってしまった小坊主探検隊のファイルの、

空白のページを眺めていました。

 

もしも、あなたが此処にいてくれたのなら、

数年の時を経て、我が家の小坊主探検隊は、

きっと、復活していたのではないかと思いました。

 

あの子が初めて、バイクに興味を持ったのは、中学生の頃。

あなたを見送り、暫くが経った頃のことでした。

 

バイクの雑誌を買っては、楽しそうに眺め、

バイクのプラモデルを作っては、嬉しそうに眺めていたあの子の姿に、

きっと、あなたなら、

一緒に、バイクで走る日を夢見たことでしょう。

早く、大きくなれって、そんなふうに願いながら。

 

やがて、バイクの免許を取ったあの子に、

きっとあなたは、言ったのよ。

 

久し振りに、探検に出掛けようか って。

 

そうして、

自転車の旅から、バイクの旅へと形を変えて、

ここに、男同士の旅、小坊主探検隊が復活したのだと思うのです。

 

きっと、あの頃みたいに、

レポートを書くことをしなくなったあの子の代わりに、

地図も、レポートもあなたが仕上げたのでしょう。

 

それはきっと、あの子と過ごした時間を、

大切に、大切に、胸の中へと残すように、

とても丁寧に仕上げられたレポート。

 

行動範囲が広がった2人は、

あの頃よりも、ずっと遠くまで、旅に出たのかも知れません。

あの頃よりも細かい地図に書き記されたルートは、

どこへ向かったのでしょうか。

 

春には、桜が綺麗な場所へ、

夏には、海が見える綺麗な場所へ、

秋には、紅葉が綺麗な場所へ、

季節を楽しめるような場所へと出掛けたのでしょうか。

 

そうして、寒くなって来た今頃の2人は、

バイクを磨くことに専念しながら、

春になったら何処へ行こうかと、相談していたのかも知れませんね。

 

時々には、私のことも誘ってくれたのかしら。

 

ゆっくり走るから、怖くないよ

たまには、一緒に行こうよ

綺麗な場所を見つけたよ って。

 

数年の時を経て、復活を遂げた小坊主探検隊のファイルには、

あなたとあの子と、時々、私

そんな家族の物語が、増えていたのかも知れませんね。

 

もう、決して増えることのない小坊主探検隊のファイルの、

空白のページを、意味もなく、めくってみれば、

何故だか、あなたの楽しそうな顔が、

見えたような気がしました。

 

 

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