拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

おじさん写真

あなたへ

 

お母さん、これ見て?

 

昨日のあの子が、唐突に、私に見せてくれたのは、

あの子が映った1枚の写真でした。

 

目の前にいるあの子とは、なんだか少し様子が違ったその写真は、

おじさんに加工されるアプリを使って撮影した写真なのだそうです。

 

これね、友達が撮ってくれたの

お父さんに似てるでしょ?

俺、びっくりしちゃった

 

そう言って、あの子は、とても嬉しそうに写真を眺めました。

 

それはきっと、何年か後の未来のあの子の姿。

あの夏のあなたよりも、

少し若いあなたの写真を見ているような気がして、

思わず、息を飲みました。

 

あの夏から幾つ、あの子はこうして、

自分の中にいるあなたを見つけて来たでしょうか。

 

ひとつひとつ、大切に拾い集めては、

何度もそこに、あなたを確認して、

あの子の胸の中には、

幾つ、大切な宝物が集まったでしょうか。

 

昨日、東日本大震災から10年目を迎えました。

この辺りでも被害は大きく、

私たちにとっても、あの日の出来事は、辛く、苦しい出来事でしたね。

昨日の私は、そっと黙祷を捧げ、あの日のことを思い返していました。

 

あれから10年後、

あなたが此処にいないだなんて、

あの頃の私は、考えたこともなかったけれど、

今、此処にあるのは、

あなたの背中を懸命に追いかける、

あの頃よりも10歳大きくなったあの子の姿。

 

今、此処に生きていることに感謝しながら、

目の前にある大切なものを、精一杯、抱き締めて生きて行こう。

 

決して忘れてはいけないあの日のことをもう一度、

胸へと刻み直して、

あなたによく似た、あの子の笑顔を見つめました。

 

ねぇ、あなた。

今よりもおじさんに映ったあの子の写真。

あなたにも見せてあげたかったな。

 

俺じゃん!

 

なんて、そんなあなたの声が聞こえてきそうなほどに、

若い頃のあなたに、とてもよく似ていたよ。