拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

幼い頃の私が見たもの

あなたへ

 

先日の私が、インターネットで思わず読み入ってしまったのは、

怖い話でした。

 

先日のあなたへの手紙には、

あの子は異常なほどに怖がりだと、

こんなことを書きましたが、

実は私も、とても怖がりであることは、

あなたもよく知っていますね。

 

それにも関わらず、途中でページを閉じることが出来ないままに、

様々な怖い話を読んでしまった私。

怖い話という世界は、

どこか人を惹きつける魅力があるのかも知れません。

 

幾つかの話を読みながら見つけたのは、

とても大きな人が、

窓の外から、こちらを覗いていたという内容のものでした。

 

あれ?

私も、こんな感じの人、見たことがある・・・

 

怖い話を読みながら、鮮明に蘇ったのは、

私の中で、数十年間、眠り続けていた記憶でした。

 

あれは、この地へと越してくる前、

私が幼い頃に住んでいたアパートでの出来事でした。

 

当時、私が暮らしていたアパートでは、

建物周辺に車が通ることはなく、

敷地内にある公園へは、

幼い子でも、 1人で遊びに行っていたような記憶があります。

 

夕飯の時間になると、窓から、大声で我が子を呼ぶ親の声が、

あちこちから聞こえてくる。

これは、あの頃の私にとって、当たり前の日常の光景でした。

 

あの出来事があった日の私は、少し暗くなるまで、

外で遊んでいたような気がします。

 

アパートの2階に住んでいた私は、

家へと帰るために、ひとりで階段を登りました。

 

階段の踊り場には、格子のようなものが備えられており、

小さな私でも、そこから、

外を見ることが出来るような作りになっていました。

 

踊り場まで登った私が、何気なく外を見ると、

格子の向こう側から、

とても大きな男の子が、こちらを覗いていました。

 

大きな、と言うのは・・・そう。

例えば、お伽話に出てくる、巨人のような大きさの男の子です。

 

こんなふうに言ってしまうと、

怖い話に聞こえてしまうのかも知れませんが、

あの頃の私にとって、何の恐怖も感じなかったのは、

その男の子が、私の知っている子だったからでした。

 

これは、私が3歳頃の出来事でした。

 

あれから、暫くが経ち、

私たち家族は、この地へと引っ越して来ました。

 

母から、あのアパートで暮らしていた頃の話を聞く機会があったのは、

アパートの敷地内で撮った1枚の写真がきっかけでした。

 

これって、昔、住んでいたアパートの子たちでしょ?

 

同年代くらいの女の子たちと一緒に撮った写真を眺めたのは、

恐らく、私が、小学生か中学生の頃だったと思います。

 

その写真は、私たち家族が引っ越すからと、

最後に、皆で並んで撮った写真だったそうです。

 

そんな話の流れから、母が話してくれたのは、

同じアパートに住んでいた、

私よりも少しだけ年下の男の子が、

亡くなってしまったという話でした。

 

その男の子は、喘息を患っていてね

いつも呼吸が苦しそうだったのよ

ある朝、いつも起きて来る時間になっても起きて来ないからと、

その子のお母さんが起こしに行ったらね

布団の中で、亡くなっていたんだって

お母さん、その話を聞いた時に、涙が止まらなくなっちゃってね

 

アパートに住んでいた頃の私が、

写真に写っていた子たち以外に、どんな子たちと遊んでいたのか、

名前も顔も、もう、忘れてしまっていましたが、

母の話に耳を傾けながら、

幼かった頃の私が見たものが鮮明に蘇り、

階段の踊り場の向こう側から、こちらを覗いていたのは、

亡くなってしまった男の子だったのだと気が付きました。

 

一度は、鮮明に蘇った記憶でしたが、何故だか、

あれから、一度も、思い出すことがないままに、

これまでを過ごして来た私ですが、

先日、怖い話を読みながら、

ずっと、記憶の奥に眠り続けていた記憶が、

再び、私の中に鮮明に蘇りました。

 

私は、何の特別な力も持たない、平凡な人間なのだと、

ずっとそう思っていましたが、

幼い頃の私は、

今の私には見えないものが、ハッキリと見えていたようです。

 

きっと、その記憶に残らないだけで、

幼い頃は皆が、特別な力を持っているのかも知れませんね。

 

3歳だったあの日の私は、

その姿が此処になくとも、あの小さな男の子の魂が、

確かに存在する証拠を見つけたのだと思います。

 

もしも、あの男の子のご両親にも話すことが出来ていたのなら、

男の子のご両親は、喜んでくれたのかも知れません。

 

幼い頃の私には、見えていたものがあったよって、

あなたにも話してみたくて、手紙を書きましたが、

いつの日か、あの男の子のご両親にも、

この手紙が届いてくれたらいいな。

 

あの日、踊り場の向こう側から、

こちらを覗いていた小さな男の子は、

とても楽しそうでしたよって。

 

 

 

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