拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

面倒で愛おしい時間

あなたへ

 

今日はさ、ここに行かなきゃならないんだよね

面倒だな

 

そう言って、私の顔を覗き込んだのは、昨日のあの子です。

え?な、なにか?なんて、目を逸らせば、

 

そんなことを言いながらも、

お母さんは、連れて行ってくれるんだよね

 

こんなことを言いながら、いそいそと出掛ける準備を整えるあの子の思うままに、

やりたいことや、やらなければならないことを後回しに、

結局は、私も準備を整えて、あの子の用事に付き合うことになりました。

 

あの子が運転免許を取ってから、1年と少しが経ちました。

 

1年前の今頃は、憧れのマイカーに乗って、

ひとりで、何処へでも出掛けていたあの子ですが、

自分で運転をすることにも、憧れの車の中の空間にも、慣れてきたのでしょう。

ここ最近は、ちょっとした用事があると、

こうして、時々、借り出されるようになりました。

 

やっぱり、助手席って楽でいいよね

 

こんなあの子の声を聞きながら。

 

1年前の私は、

あの子の専属運転手のような日々に終わりが来てしまったことに、

ほんの少し、寂しさを感じていましたが、

またここに、あの子の専属運転手の時間が戻って来るとは、

思いもしませんでした。

 

自分の車があるでしょう?

 

こんなことを言いながらも、あの子の思うがままに動いてしまうのは、

この時間にも、終わりの時が見えているからなのだと思います。

 

一度は、この地から出てみたいんだよね

 

卒業後は、県外の会社へ就職したいと、

あの子がこんなふうに考えるようになったのは、

専門学校へ入学し、暫くが経ってからのことでした。

 

あの子が成長し、様々なことに対して、

あと何度、こうして手を掛けてあげられるだろうかと、

こんなことを考えるようになりましたが、

漠然とした遠くはない未来、から、確実であろう遠くはない未来へと変わり、

あの子が巣立った後のことを、改めて想像してみると、

ほんの少し、面倒に感じるあの子からのお願いも、

より一層、愛おしく感じるようになりました。

 

私の元から、あの子が巣立って行けば、

こんな時間も、本当になくなってしまうんだなって。

 

今度また、俺の車で何処かへ行こうね

 

こんな、

思わず楽しみになってしまうような、今度の約束も忘れずにくれる、

私の扱いが上手なあの子に翻弄されながら、

今は、あの子とのどんな時間も大切にしたいな。

 

残り僅かとなってきた、

ほんの少し面倒で、とても愛おしいこの時間を、

しっかりと胸に焼き付けて。

 

 

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