拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

バイクのチェーンの交換の仕方

あなたへ

 

車の免許を取り、

一度は車に置かれたウエイトですが、

近頃のあの子には、再び、バイクブームが到来したようです。

 

少し、友達と走ってくるね

 

以前のように、こんな声が聞こえるようになりました。

 

皆と合流し、バイクで走ったら帰ってくる。

人との距離も充分にとれるこの遊び方は、

この時代に合った遊び方なのかも知れません。

 

どんなに疲れていても、

ヘルメットをピカピカに磨くことだけは、怠らず、

様々な角度からヘルメットを眺める様子も、

よく見かけるようになりました。

 

お父さんって、凄いよね

 

あの子のバイクのチェーンを交換しなければならないという話から、

私たちは、あの頃のあなたのことを思い出していました。

 

あれは、いつのことだったでしょうか。

 

丁度、夕飯の支度に取り掛かっていたところに、

掛かってきたのは、あなたからの電話でした。

 

バイクのチェーンが切れちゃった

変えのチェーンがあるはずだから、

悪いけれど、持って来てくれる?

 

あの頃、バイクでの通勤をしていたあなた。

 

帰宅途中で、バイクのチェーンが切れて、走れなくなってしまったと連絡を貰い、

あの子と一緒に、あなたの元へと急いだのでした。

 

路肩にバイクを停めて、私たちを待っていたあなたを見つけた時に、

何故だか、とても安堵したこと、今でも良く覚えています。

 

あの日は少し肌寒かった日。

 

私が持って行ったチェーンを確認すると、

近くにあった自販機で、スープを買ってくれたあなた。

 

車のライトがあれば取り付けは出来るから、

乗ってていいよ

 

そう言って、私たちを車に乗せると、

あなたは、黙々と作業に取り掛り、

すぐにチェーンの交換が終わったのでした。

 

これは、あの頃の私たちの日常の一コマ。

 

お父さんって凄いよね

なんでも出来るよね

 

あの日のことをよく覚えていたあの子は、

そう言って、あの日のことを振り返ると、寂しそうに、呟きました。

 

お父さんがいてくれたら、

チェーンの交換の仕方、教えて貰えたのになって。

 

あの子は、バイクのチェーンの交換の仕方を知りません。

 

バイクを買ってからのこれまで、様々なパーツを、自分で変えてきたあの子。

 

全て、1から自分で学び、今の形へと変えてきたように、

あの子はこれから、チェーンの交換の仕方も、自分で学んでいくのでしょう。

 

あの子が成長するほどに、私には、

教えてあげることの出来ないことが増えてきました。

 

私には、見守ることしか出来ないけれど、

あの子が、あなたを想いながら、どんなふうに成長していくのか、

本当は、あの子が、あなたからどんなことを教わりたかったのか、

私が全部、覚えておくよ。

 

これもきっと、あなたの分まで、

あの子の成長を見守るってことだから。

 

 

 

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