拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

私を支えてくれた人

あなたへ

 

私の知り合いにね

突然、心臓を患って、生死を彷徨った人がいるのよ

 

こんな話を聞かせてくれたのは、

かつて、一緒に働いていた職場の先輩でした。

 

一時は生死を彷徨った彼の心臓へは機械が入り、

それがきっかけとなって、

長く勤めてきた会社を退職した彼は、

それまでとは全く別な職種の仕事へ就くことになったそう。

 

思い描いた人生とは、全く別な人生を歩むことになったけれど、

今の方が充実した時間を過ごせているのだと、そんな話を聞かせてくれた彼は、

とても生き生きと日々を過ごしているのだと、

こんな内容の話でした。

 

先輩が、この話を聞かせてくれたのは、

あなたの体調が、快方へと向かい、

一般病棟へと移り、少しの時間が経った頃のことでした。

 

あなたなら、きっと大丈夫。

 

何の根拠もないままに、ただあなたを信じていたあの頃の私にとって、

先輩が聞かせてくれたこの話は、

きっと大丈夫、から、

絶対に大丈夫へと変わるには、充分過ぎる材料でした。

 

あなたなら、絶対に大丈夫。

 

こんな強い気持ちで、あなたの側に寄り添うことが出来たから、

病室での時間も、いつも通りの私たちで過ごすことが出来たのだと、

こんな捉え方もあるのかも知れません。

 

あの夏の私が思い描いた未来は、やって来ないまま、

あなたは、この世界から、いなくなりました。

 

あなたを見送ってから、どのくらいが経った頃だったでしょうか。

この話を聞かせてくれた先輩は、

私に、そちら側の世界についてを話して聞かせてくれました。

 

向こう側の世界はね、絶対にあるのよ

ただ、こちら側からは、見えないだけなのよって。

 

あなたが入院していた時も、見送った後も、

先輩が話して聞かせてくれた話は、

不思議と、私の中へ、しっかりと根付き、

安心出来るような気持ちにさせてくれました。

 

あの夏が過ぎ、ゆっくりと歩みながら、

やがて、自分の夢を持つことが出来た私は、

あの頃よりも、しっかりとした足取りで歩めるようになりました。

 

思い返してみれば、

私の足取りが、しっかりとした頃を見計らったかのように、

先輩は、突然、職場を去って行きました。

 

人との出会いとは、とても不思議なものです。

 

今、思い返してみると、

あの頃、私の側にいてくれた先輩は、

あの夏の私を支えてくれる役目を持って、

出会ってくれたのかも知れないと、そんなふうに感じました。

 

時々、先輩が聞かせてくれた話を思い出しては、

遠くで頑張る先輩を想います。

きっと何処かで、幸せでありますようにって。

 

ねぇ、あなた。

人生とは、とても不思議なものですね。