拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

お味噌汁の味噌の量

あなたへ

 

お味噌汁の味噌の量は、そのうち、

味見なんてしなくたって、分かるようになるものよ

 

これは、かつて一緒に働いていた先輩の言葉でした。

 

料理が苦手な私に、様々な料理を教えてくれていた先輩は、

具材によって、

ちょっとだけ濃い味のお味噌汁を作る時も、そうでない時も、

味見などしなくても、味噌の量を調節することが出来るのだと、

こんな話を聞かせてくれました。

 

あなたも、いつかは出来るようになるから

 

先輩は、こんなふうに言ってくれていましたが、

なにぶん、料理が苦手な私です。

きっと私には、到底、習得できることのない技であるのだろうと、

あの頃の私は、ただただ先輩の持つ技に驚きながら、話に耳を傾けたのでした。

 

私がお味噌汁を作りに力を入れるようになったのは、

こちら側の異変があってからのことでした。

 

あの子も私も、元気に毎日を過ごすことが出来ますようにと祈るような気持ちで、

お味噌汁作りに力を注いでいた私ですが、

そんな日々も2年を過ぎ、ふと、気が付いてみれば、

いつかの先輩が話してくれたあの技を、私も習得することが出来ていたのです。

 

とは言え、先輩のように、

味見をせずに食卓へと並べる勇気は、まだ持てない私は、

毎回、味を確認していますが、

いつの頃からか、「丁度いい!」と、ひとりで頷くのが、

お味噌汁作りの締めとなりました。

 

あなたを見送り、少しずつ、料理を頑張るようになった私は、

気が付けば、いつかの私が、

絶対に習得出来ないと思っていた技までもを習得することができました。

 

ちょっと濃い!

ちょっと薄い!とお味噌汁作りに苦戦していたあの頃の私は、

こんなに成長することが出来ましたよ。

 

ねぇあなた。凄いでしょう?

 

 

 

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休息の時間と知らない本

あなたへ

 

大きな一歩を踏み出してからの私は、

日々、目の前の課題に取り組みながら、自分なりの一歩ずつを歩んできました。

 

時には、目の前の課題に途方に暮れながらも、

歩みを止めることはなかった私ですが、

突然に集中力が切れて、脱力感と共に、

何も手に付かなくなってしまったのは、先日のことでした。

 

疲れたなって、大きなため息ばかりが漏れ出てしまうばかりで、

全然、前に進めない。

 

こんな重苦しい気持ちに、どうしたら良いのか分からずに、

それなら、少しだけ休んでみようと思い立ちました。

 

時間帯は既に夜。

限られた休息の仕方の中で、私が選んだのは読書でした。

 

此処へ越してきてから、

押し入れに仕舞ったままになっていた本用のダンボール箱を開けて、

何気なく、一番上にあった本を手に取ってみると、

全く記憶にないタイトルが目に飛び込んできました。

 

あれ?こんな本、持っていたかな

自分の持っている本は、全て把握しているはずなのにと、

初めて手に取ったような気がする本をまじまじと見つめてみました。

 

その綺麗さからすると、

一度読んだだけであったのか、それとも、買っただけで読まなかったのか。

発行の時期を見てみると、

あなたを見送り、少しの時間が経った頃に発行された本であることが分かりました。

 

あの頃の私が、本屋さんへと立ち寄って、

ゆっくりと本を選ぶことなど考え難いのですが、

今の私の手の中にあるのだから、

きっと自分で選んで購入したものだったのでしょう。

 

記憶にない本を読み進めてみれば、ページを捲るたびに、

どう生きたいのか、生きるとはなんなのかと、

様々に考えさせられるような内容のストーリーが描かれていました。

 

今の私にとっての、これからの人生へのヒントともなるような言葉が、

たくさん散りばめられているようにも感じたこの本は、

あの頃の私から、今の私への贈り物であったのかも知れません。

 

人生とは、つくづく不思議なものです。

 

偶然を装いながら、今の自分にとって、

必要だと思える言葉や考え方、視点を突然に見つけたことは、

これまでに何度あったでしょうか。

 

苦悩の連続なのが人生なのかも知れないけれど、

それを乗り越えるためのヒントが幾つも隠されているのもまた、

人生だと言えるのかも知れません。

 

本が入った箱の中、

偶然、一番上にあったその本を手にしたのが今であったのは、

今の私にとって、それが必要なタイミングであったからなのでしょう。

 

さて、久しぶりに休息を取った翌日は、

これまでになく爽快に目を覚ますことが出来ました。

 

どんなに好きなことであっても、

望んだ道を歩もうとも、

休む時間というのは、とても大切なものなのかも知れませんね。

 

私の新しい道はまだ始まったばかり。

 

試行錯誤を繰り返し、一歩進めば、新たな課題に途方に暮れたり、

これまでの私が知らなかった忙しなさが此処にありますが、

こんな苦悩も、大きな一歩を踏み出すことが出来たから知ることが出来たこと。

 

この先にはきっと、素敵な景色が広がっているに違いないと、

何故だか、強くそう感じるのだから、きっとそうなのでしょう。

 

時々、疲れてしまったら、こうして、ゆっくりと休んで、

新しい発見をしながら、楽しんで歩んでいきたいなと思います。

 

 

 

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初めてのイベント

あなたへ

 

入学式の延期のお知らせから始まったあの子の専門学生生活は、

交流の輪を広げるためのキャンプも、

スポーツ大会も、海外研修も、職場体験も、

楽しそうなイベントは全て中止が発表され、

ただ、勉強に向き合うだけの日々となりました。

 

あの学校へ行くことが出来て良かったと、こんな話してくれたのは、

漸く、学校へと登校出来るようになってから、

少しの時間が経った頃のことでしたが、

あれからもずっと、日々の学生生活の中での楽しい話は尽きることはなく、

あの子なりに、

そこにたくさんの楽しさを見つけて此処までを歩んで来ました。

 

こちら側の現状から、

このまま卒業を迎えることも仕方がないようにも感じていましたが、

先日、スポーツ大会が行われました。

 

専門学校へと入学してから、初めてのイベントです。

 

楽しそうなイベントに胸を躍らせたあの子は、前日から大興奮。

そうして迎えた当日の朝は、

とても張り切って、早くに出掛けて行きました。

 

様々なスポーツへと取り組んだあの日、

帰宅したあの子が一番楽しそうに話して聞かせてくれたのは、リレーでのことでした。

 

俺、足が早くなっていたんだよ

びっくりしたよ

 

こんな言葉と共に動画を観せて貰えば、

バトンを持って、堂々とトップを走るあの子の力強い姿に、

思わず感動してしまいました。

 

中学生の頃は、長距離選手だったあの子。

走るのは好きだけれど、決して特別分野ではなく、

また、短距離走に関しては、苦手意識もあったあの子ですが、

自身でも気付かぬうちに、

実はこっそりと、開花していたようです。

 

走ること自体、とても久し振りだったあの子ですが、

これは日々の筋トレの効果もあってのことなのでしょうか。

人間の成長というのは、本当に分からないものですね。

 

専門学校へ入学し、3年目にして初めてのイベントでは、

あの子の新しい一面を発見する機会ともなりました。

 

あの日のあの子の口からは、

たくさんの楽しかったという言葉を聞くことが出来ました。

 

きっとこれから先、何年が経っても、

学生生活を振り返れば、

最高に楽しかった思い出として、

あの子の中に、色濃く残る大切な宝物となることでしょう。

 

ねぇ、あなたは、何処かで見ていたのかな。

あの子の笑顔も、バトンを持って力強く走る姿も。

 

 

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