拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

味の好みと目玉焼き

あなたへ

 

天ぷらに、天つゆではなく、塩を好むようになったのも、

紅茶よりも、コーヒーを好むようになったのも、

あなたと結婚してから変わった私の好みでした。

 

結婚する前の私と、

結婚してからの私の味の好みが変わったように、

思えば、あの夏からの私の好みもまた、更に変化をしてきました。

 

あの夏にいた私は、目玉焼きにはお醤油が好きだったけれど、

今の私は、塩が好み。

因みに、今のあの子は、ブラックペッパーが好みです。

 

特に好まなかったお味噌汁が好きになったと、こんな手紙を書いたのは、

あなたよりも、ひとつ年上になった私でした。

 

シナモンは好まなかった私だけれど、

美味しいと感じるシナモンもあることを知り、

時々には、シナモンを好んで食べるようになったのは、

あなたを見送ってから、どれくらいが経った頃からだっただろう。

 

柚子は相変わらず苦手ですが、

いつか、好んで食べる味へと変わる日が来るのかも知れませんね。

 

味の好み。

こんな視点から、これまでのことを振り返ってみると、

もしも、此処にあなたがいてくれたのなら、

あなたの味への好みもまた、

きっと変化を見せてくれていたのでしょう。

 

今日は、コーヒーじゃなくて、お茶がいいな。

こんなあなたの声が聞こえる日が来たのかも知れません。

 

揚げ物よりも、煮物を好むようになって、

あの頃のあなたが嫌がっていた玄米を好む日も、

来たのかも知れませんね。

 

それなら、此処にいるあなたは、

目玉焼きに、何をかけるのが好みだったのだろう。

 

当たり前のように、目玉焼きに塩を振りながら、

3人とも、

目玉焼きにはお醤油が当たり前だったあの頃のことを、

思い出していました。

 

もしも此処に、家族3人での、あの夏の続きがあったとしたのなら、

今頃の私たちは、

それぞれに違う味の目玉焼きを好むようになっていたのかなって。

 

 

 

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あの日食べたアップルパイの味

あなたへ

 

涙が零れ落ちないように、

口いっぱいに詰め込んだアップルパイの味は、

私の中に強烈なインパクトを残したまま、

決して消えない痛みとなって、私の中に止まり続けました。

 

あの時、ごめんね。

 

あなたに、そう伝えることが出来ないままに、

アップルパイを口いっぱいに詰め込んだのは、

あなたを見送ってから、どれくらいが経ってからだったでしょうか。

 

私の胸の奥深くまで、痛みを刻み付けたあの日のアップルパイの味は、

やがて、未来の私に、

ほんの少しの勇気を持たせてくれる痛みへと変わっていったのだと思います。

 

あの時、こんなことを伝えることが出来て良かった。

 

あれからの私は、少しずつ、

そう思える方を選ぶことが出来るようになっていきました。

 

時には、ちょっと照れてしまうような恥ずかしいことも、

勇気を出して伝えてみる。

 

振り返ってみれば、

小さな、あの時良かったなを積み重ねられるようになった私は、

後悔を残すような選択をしないようになりました。

 

変わりゆく景色と同じように、

人とのご縁も変わりゆくのが人生というものでもあるのでしょう。

 

またいつかね。

 

こんな前向きな言葉と笑顔を最後に、

そこで途絶えてしまうご縁もあるけれど、

途絶えてしまったご縁もまた、

この人生の中に新しい色をくれた大切なご縁。

 

今日の私は、この人生の中へ関わりを持ってくれた、

大切な人たちのことを思い出しながら、

あの時も、あの時も、こんなことを伝えることが出来て良かったなって、

こんな曇りのない気持ちで振り返っていました。

 

大切な人の手を離す痛みを教えてくれたあなた。

 

あなたに伝えたかった、

あの時ごめんねは、もう、伝えることは出来ないけれど、

もしもこれも学びだと言うのなら、

決して消えることのない痛みを知り、

私は学ぶことが出来たのだと思います。

 

だからね、

 

だから、

 

そう。

 

今の私は、あなたに、ごめんねではなくて、

ありがとうって伝えたいなと思いました。

 

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あの子の新しい挑戦

あなたへ

 

俺、今度は何か別なことやってみたい

 

こんな話を聞かせてくれたのは、

長く続けていた武道を卒業することに決めた頃のあの子でした。

 

あの子が格闘技に興味を持ち始めたのは、

丁度、あの頃からであったように思います。

 

こちら側の現状などから、

なかなか新しい習い事へ踏み出せずにいたあの子ですが、

遂に新しいことへの挑戦の一歩を踏み出しました。

キックボクシングへの挑戦です。

 

武道と格闘技は全然違う

難しいけれど、凄く楽しかったよ

 

初めてのボクシングから帰ってきたあの子は、

こう言って、最高の笑顔を見せてくれました。

 

これまでとは全く違う世界を知り、

あの子は、本当に楽しそうに過ごしています。

 

我が家の中に新しく、ボクシング用具が増え、

私に増えたのは、バンテージなるものを洗うという作業です。

 

私はずっと、密かに、

ボクシングに使うバンテージなるものと、

薬局などで売られている包帯は同じものなのだと思っていましたが、

あの子がボクシングを始めたことで、

それは全くの別なものであるということを知りました。

 

新しい物事へと挑戦するあの子を見守る私に待っていてくれるのは、

いつでも、新しい知識です。

 

どんなに小さなことでも、

新しいことを知れることはとても嬉しいものです。

 

知らなかったことを知る機会が訪れた時というのは、

私には、これまでとはほんの少しだけ、

景色が違って見えるようにも思えるのです。

 

さて、体を鍛えるようになってから、

随分と逞しくなったあの子ですが、

使う筋肉の種類が異なるのかも知れません。

あれから、何度かボクシングジムへと通いながら、

あの子の姿は、また一段と逞しさを感じられるようになりました。

 

そうして私に増えたのは、あの子の筋肉を褒める時間。

 

なんだか笑ってしまいますが、

こんな時間も楽しみながら、

あの子の成長を愛おしく見守っています。

 

此処に流れる日常の中の何気ない時間も、

あなたにも見せてあげたかった景色。

 

大切に、大切に集めて、

いつかあなたへの贈り物にするからね。

 

 

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