拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子と過ごした21年間

あなたへ

 

この子はどんな道を歩むのかな。

この子はどんな大人になるのだろう。

 

小さなあの子を抱きながら、

私たちが初めてこんな話をしたのは、

いつのことだったでしょうか。

 

ねぇ、あなた。

あの頃の私たちには、全く想像もつきませんでしたね。

 

ただ小さな温もりをくれるあの子が、どんなふうに成長して、

どんなふうに、将来の夢を見つけていくのかだなんてさ。

 

あの頃の私たちにとって、それらは全て、

ずっと、ずっと先のことなのだと思っていましたね。

 

この子も、いつかは巣立って行くんだねってさ。

 

ねぇ、あなた

 

ねぇ、あなた

 

えっと・・・さ・・・

 

あぁ、なんだか、今日の私は駄目です。

 

胸の中に、たくさんの感情が溢れるばかりで、

今日の私には、それらをあなたに上手く伝える言葉が見つかりません。

 

あの子は明日、此処から巣立ちます。

 

本当は、寂しいけれど、

本当は、もう少しだけ、

あの子と一緒に、此処で過ごしていたいと思ってしまうけれど、

でも、

あんなに小さかったあの子が、こんなに立派に成長してくれたことも、

しっかりとした足取りで、前へと歩める子に育ってくれたことも、

全部が、とても嬉しい。

 

そっと、目を閉じてみれば、

あの子と、たくさん笑った記憶ばかりが蘇ります。

 

あの子と過ごしたこの21年間は、全部が本当に楽しかった。

 

だからね、明日は、

最高の笑顔で、あの子を見送ってくるからね。

 

 

 

年を重ねる -2023-

あなたへ

 

無事にまたひとつ、年を重ねることが出来ました。

 

あなたよりも、5つ多くの年を重ねることが出来た今の私に見えるのは、

バタバタと過ぎ行く時間です。

 

あの子のことを最優先にしながら、家の中を整えていると、

こんな手紙を書いたのは、先日のことでしたが、

あれからの我が家では、

更に、慌ただしさが勢いを増していきました。

 

あっ!これやらなきゃ!

あれもまだ終わってないよね

 

日を追うごとに、こんな会話も多くなり、

ある程度組んでいたはずの段取りには、

実はかなりの抜けがあることに気が付いて、

バタバタと、今日までの時間が過ぎ去りました。

 

我が子の巣立ちの時。

 

最初で最後の経験だからこそ、

これまでには経験をしたこともないような時間の経ち方を、

経験するとも言えるのかも知れません。

 

ふと、辺りを見渡してみれば、

いつの間にか、少しずつ、桜の花が開いていることに漸く気が付いたのは、

昨日のことでした。

 

バタバタとした時間を過ごしてきた私たちですが、

今日は、私の誕生日だからと、あの子が食事に誘ってくれました。

 

何処へ行きたい?

 

こんなあの子の言葉に私がリクエストしたのは、

あなたとの思い出と、あの子との思い出が詰まった、あのレストラン。

 

今日はあの子のお陰で、

久し振りに、とてもゆっくりとした時間を過ごすことが出来ました。

 

お誕生日おめでとう

 

これは、昨夜0時ぴったりに聞こえてきたあの子の声。

どんなに慌ただしい時間を過ごしていても、

忘れずに誕生日を祝ってくれたあの子の声も、笑顔も、

あの子がくれたゆっくりと食事を楽しんだひとときも、

私は、生涯忘れることはないでしょう。

 

 

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最近の私

あなたへ

 

眠らない身体をください

 

誰にともなく、思わずこんな言葉を呟いてしまうのは、

ここ最近の私です。

 

最近の私は、間も無く巣立ちの日を迎えるあの子と共に、

とんでもなく忙しい時間を過ごしています。

 

何故なら、少しずつ、部屋を片付けるあの子の姿を見守りながら、

そうだ!私も掃除をしよう!などと、思い立ってしまったからなのです。

 

あの子の巣立ちの時。

それは、私にとっても、

新しい出発の時という捉え方も出来るのでしょう。

 

それなら私も、部屋を整えて、

新しい出発の時を迎えたいと、思いついたのでした。

 

他にやりたいこともあるけれど、今後の私には、

十分過ぎるほどにそれらと向き合う時間があるのでしょう。

一旦は、それら全てを後回しに、

あの子と共にやらなければならないことを最優先にしながら、

部屋を整えることに集中しています。

 

こうして家の中を徹底的に整えるのは、

思えば、此処へ越して来てから初めてのこと。

 

改めて、家中を眺めてみれば、

此処へ越して来る時の私にとっては必要だったはずのものが、

既に不要になっていたことを知り、

思っていたよりも、随分と大掛かりなことになってしまいました。

 

何故こんな時期に、こんなことを思い立ってしまったのか、

とも思いますが、

こんな時期だからこそ、と言い換えることも出来るのかも知れません。

 

あの子の巣立ちをきっかけにして、

今の自分にとって不要になったものが、

たくさんあるのだという新しい視点を見つけることが出来たのですから。

 

もし出来れば、幾晩かを眠らずに、

一気に作業を進めることが出来たらなどと、

考えてしまうほどに、忙しい日々を送らなくてはならなくなってしまいましたが、

これもまた、私なりの、

あの子の巣立ちへの向き合い方のひとつなのだと思います。

 

そんなことをしたら、あの子が巣立った後で、

尚更に部屋が広く、寂しくも感じるんじゃないの?

 

なんて、こんなあなたの声が聞こえてきそうですが、

そんな気持ちもまた、

あなたの分までしっかりと感じてみたいと思っています。

 

だって、きっとね、

此処から先の私は、少しずつ、少しずつ、

ひとりに慣れてしまうと思うのです。

 

ひとりに慣れてしまえば、二度と、

同じ気持ちを味わうことは出来ないのでしょう。

 

この人生の中で、一度しか感じることの出来ない気持ちは、

ひとりで暮らすには、広すぎると感じる部屋で、

十分に味わい尽くして、

またそこから先を歩んでみたいと思っています。