2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧
意味もなく、家の中をウロウロする彼に、 私は何度、同じ言葉を掛けただろう。 『ねぇ、あなた、ご飯食べて?』 何度もそう問いかけているのに、彼は全然話を聞いてくれないの。 あの子にだけご飯を食べさせる彼は、何をするでもなく落ち着かない。 『ねえ!…
疲れた 眠い お腹が空いた そんな感情すら残ってはいない。 ただ、もし出来れば、少しだけ、そっとしておいて欲しい。 もう何も考えたくないし、誰とも話したくない。 そんな気持ちを、胸の奥へと閉じ込めて、 告別式までは、どうにか乗り越えなければならな…
私たちは今、葬儀社にいる。 自分の告別式の打ち合わせに参加するだなんて、 なんとも奇妙だけれど、 彼とあの子が並んで座るその隣に、一応、私も座ってみた。 私の前にだけ、お茶がないこの光景に、 私は、もう、この世のものではなくなってしまったのだと…
『愛する夫と息子を遺して、こんなことになるなんて! なんてことなの?』 まずは叫んでみた。 こんなに大声で叫んでいるのに、誰も見向きもしない。 夫と息子に看取られて、私は、たった今、息を引き取った。 半透明の自分の手のひらを見つめて、小さく溜息…
ご臨終です その言葉を合図に 彼らは たくさんの涙を流した まだ温もりが残っているであろう手を握り まだ血色の良い頬に触れ まるで その感覚を体に刻みつけるかのように 彼らは私の肉体から手を離そうとはしなかった そんな2人の側で 私はただ 彼らを見つ…
あなたへ 今日は、11月22日。 いい夫婦の日 だそうですよ。 カレンダーをよく見てみれば、 数字の語呂合わせや、記念日、 1年の中には、たくさんの、 いつもありがとうを伝える機会があるように思います。 いい夫婦の日。 カレンダーを眺めながら、 あなたと…
あなたへ あの頃の私が、あなたとのお別れの日を知っていたのなら、 今とは少しだけ違う何かが残っていたのでしょうか。 どうにもならないことであることを理解しながらも、 私は時々、考えてしまいます。 どんな時間を過ごせれば、良かったのだろうかって。…
あなたへ 私は、どれだけの記憶を、 あの夏に置いてきてしまったのだろう。 あなたが好きだった缶コーヒーを眺めながら、 そんなことを考えていました。 先日、ふと、思い出して、 あなたにお供えした、缶コーヒー。 実はね、 あなたが好きだった缶コーヒー…
あなたへ 寒さに向かうこの季節、 思えば、あの子は、毎年、今くらいの時期になると、 体調を崩すように思います。 今年も例外なく、体調を崩したあの子は、 熱はないけれど、頭が痛い 咳は酷くはないけれど、鼻水が止まらないと、 なんだか、とても辛そうな…
あなたへ あの缶コーヒー、久しぶりに飲みたいな 買って来てよ あなたは、そんなふうに、 私に話し掛けてくれていたのでしょうか。 早速、あなたの場所へと、缶コーヒーをお供えしながら、 あの頃のあなたのことを思い出していました。 庭の草取りを担当して…
あなたへ 俺ね、今の自分、好きなんだ あの子がそう話してくれたのは、 あの子の将来の夢について話し合っていた時のことでした。 今の自分がいるのは、 お父さんが此処にいないからなのだと、 あの子のそんな話に、 辛く、悲しく思いながらも、 私は、惹き…
あなたへ あれから、1ヶ月と少しが経ちました。 夢の中、 あなたがプロポーズをしてくれた時のことを思い出していました。 寂しがり屋な私ですが、 あの日からの私の心は、ずっと満たされたまま、 あなたからの愛が溢れています。 あなたに逢いたいことに変…
あなたへ あなたが知らない、 あの子の中のジョニーの存在。 そんなに大したこともないんでしょ? なんて、思っているでしょうか。 とんでもありません。 毎朝、毎朝、起こしても、起きないあの子を起こすのが、 どんなに大変なことなのか、 いつでも目覚め…
あなたへ あなたを見送ってからの私が、一番変わったところは、 言葉にして、気持ちを伝えるようになったことです。 思い返してみれば、あの頃の私は、 言葉にしなくても、気持ちは伝わるものだと思っていました。 家族だから いつの間にか、そんなふうに、 …
あなたへ 先日、あの子と、名前の話をしました。 あの子の話に出てくる友達の呼び名は、その殆どが苗字ですが、 下の名前は、こんな名前なんだよと、 色々な子たちの、下の名前を教えてくれました。 どの子も、とても素敵な名前ばかりで、 その名を聞く度に…
あなたへ 今日の私が、一瞬、 心穏やかでいられなくなったのは、 親よりも先に死んだら、地獄行き こんな言葉を目にしたからでした。 大抵の嫌なことは我慢出来るけれど、 あなたのことだけは、我慢出来ないの。 その文字を見つめながら、 思わず想像したの…
あなたへ あの頃の私の気持ちを綴った文字を眺めながら、 得体の知れないアレを思い出していました。 あなたを見送ってからずっと、 私は、得体の知れない何かに追われていました。 どんなに頑張って逃げても、 得体の知れないアレは、すぐ背後にまで迫り、 …
あなたへ 今年も、あなたの実家から、キウイフルーツが届きました。 今年のキウイフルーツも、大粒で、とても美味しそう。 食べごろ間近になったら、 あなたのところにも、お供えしますね。 早速、あなたの実家へとお礼の電話を掛けると、 いつも通り、元気…