拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

あなたの願いが叶いました【5】

「なんだね?そのハッキリしない態度は! はぁ・・・人間は分からんわ。 さっぱり分からん!ハッキリしなさいよ! この爺が、わざわざその願いを叶えに来てあげたというのに、全く・・・ あなたねぇ、 それなら、何故、空を見上げて、彼に逢いたいなどと言い…

あなたの願いが叶いました【4】

そういえば、おじいさんは、さっきから、支度をしろと騒いでいる。 私の夢を叶えてくれるとも。 一体、何のことだろう。 「えっと、どこに、ですか?」 「あれ?空を見上げて、お願いしてなかったかな?彼に逢いたいって。 さて、その彼とは、何処にいるのか…

あなたの願いが叶いました 【3】

一言も発することが出来ないままの私を、突然に急かし出した。 「いつまで座っているのです?さぁ!さぁ!支度を!」 突然現れた目の前の小さなおじいさんは、 忙しなく右へ左へと小走りしながら、急げ急げと繰り返す。 体が動かないままの私は、たくさんの…

あなたの願いが叶いました【2】

「迎えに来たよ。」 深く静かで、とても優しい声で目が覚めた。 無意識に携帯電話の画面を確認すれば、0:00。 眠りに就いてから、然程、時間は経っていない。 ボーッとする頭のまま、目を擦ったところで、窓を叩く音が聞こえた。 そして、再び聞こえたのは、…

あなたの願いが叶いました【1】

神様、お願いします。 どうか、彼に逢わせて下さい。 ほんの少しだけでいいのです。 ほんの少しだけ・・・ 私は時々、空を見上げては、 叶わぬ願いと知りながらも、こうして、願いを口にしてみる。 もう一度だけ、彼に逢いたい と。 そうして、 たくさんの大…

お兄さんジョニー

あなたへ 高校を卒業し、こちらのこの事態から、 まだ、進学先へ入学出来ずにいるあの子は今、 とても長いお休みを過ごしています。 高校の自由登校と、入学延期。 思えば、あの子の長いお休みは、3ヶ月を迎えようとしています。 こんなにも長く休みが続いて…

トマト

あなたへ 最近のこちらの事態から、出来るだけ外出を控えている私は、 以前のように、 頻繁にスーパーへ買い物に行くことがなくなりました。 出来る限り、家にあるもので食事を済ませ、 欲しいものがあっても、 出来るだけ、買い物に出ないで済む方法を考え…

共通の夢

あなたへ 俺さ、おじいちゃんになるのが夢なんだよね 先日、雑談から、 あの子が、こんな話を聞かせてくれました。 幾つもの年を重ねて、おじいちゃんになるまで生きたいと。 とても奇遇ですが、私も、おばあちゃんになることが夢です。 あなたを見送り、い…

日常生活の中で

あなたへ 出来る限りの自粛生活をするようになってから、 もう何週目になるでしょうか。 ここ暫くの週末の大半は、自宅での時間を過ごしています。 土曜日だった昨日のこちらでは、雨が降りました。 朝から少し肌寒く、 寝不足だったせいもあったのかも知れ…

その短い人生の中で

あなたへ あの頃のあなたは、 未来の私たちのために、 大切なものを持たせてくれたことに、 気が付いていましたか。 あの頃のあなたが、 私たちに何をくれたのかを考えていました。 あなたは、その短い人生の中で、 あの子にも、私にも、夢を持たせてくれま…

恐怖との戦い

あなたへ あなたに初めて、コロナウイルスに関する手紙を書いたのは、 今年に入ってからのことでしたね。 念のために、マスクを少し多めに購入し、 どうしたら良いのかも分からずに、 お味噌汁作りに力を入れたりと、 試行錯誤している間に、きっと、この事…

真新しい道

あなたへ お父さんみたいになりたい あの日のあの子の声は、 あなたのところまで、届いたでしょうか。 あの子が、自分の歩む道を決めたのは、 あなたの3回目の命日のことでした。 あの日のあの子は、 将来、あなたみたいな大人になりたいのだと、 真剣に話を…

あなたの声が聞けるまで

あなたへ あの子が、あなたの夢を見たよと話をしてくれました。 夢の中の舞台は、 私たち家族3人で暮らしていた、あの家だったそうです。 そこで、あの子が最初に見たのは、 あなたが庭に作ってくれた自転車置き場に置かれた、 あなたのバイクと、あの子のバ…

特別な景色

あなたへ 桜の時期は、とても短いですね。 満開だった桜の花が散り始め、 こちらでは、 ピンク色の景色から、緑色の景色へと、変わりつつあります。 先日、 こちらでは、例年よりも早くに、桜が咲き始めましたよと、 あなたへ、そんな報告をしましたが、 今…

コトバ -春-2020

春の風を 覚えていますか 春の色を 覚えていますか 春の匂いを 覚えていますか その髪を揺らす爽やかな空気を その瞳に映る鮮やかさを 鼻を擽る甘い香りを 覚えていますか 一緒に過ごした三番目の春 あの頃のふたりを覚えていますか 同じ将来を思い描いたあ…

あの子の秘密基地

あなたへ 最近のあの子を見ていると、 なんだか、若い頃の自分を見ているようで、笑ってしまいます。 かつての私にとって、自分の車の中は、 秘密基地によく似た場所でした。 いつかの私は、あなたにそんな手紙を書きましたが、 念願だった車を手に入れたあ…

あなたへ あなたよりも、ひとつ年上だった私が歩んで来た道のりを、 思い返していました。 その年齢としての最後の日、 人生、山あり谷あり なんて言葉がありながら、 私が歩んだのは、山ばかりで、谷などなかったと、 あの日の私は、そんなふうに、1年を振…

専属運転手、終わりの時

あなたへ 俺は、こんな車に乗りたい この冬の、 あの子の専属運転手のような日々の中の、 車内でのあの子の言葉を思い出していました。 あの子の用事が重なり、私の休みなど、皆無だった日々。 時に、面倒に感じることもあるけれど、 この時間を楽しむよと、…

来世の夢

あなたへ いつからだろう。 私ね、時々、生まれ変わってからのことを考えるの。 生まれ変わった私たちは、どんなふうに出会うのかな とか、 今度出会った2人は、どんな2人なのかな とかね。 いつかの私は、 次にあなたと出会う私は、史上最高のいい女になっ…

それぞれの試練

あなたへ 子供が、登校拒否になっちゃってさ 子供が、高校中退させられちゃってさ 主人が、行方不明になっちゃってさ 本当に大変だったの あっ、もう見つかったから、今は大丈夫よ 我が子の深刻な問題と向き合う人 夫婦間での深刻な問題と向き合う人 我が子…

芸術作品

あなたへ この2年間の、あの子のバイクライフを見守りながら、 私の中でのバイクへの印象が、随分と変わったように思います。 ここを少しだけ変えて、今はこうなったよ この2年の間に、あの子のバイクの写真を見せられながら、 何度、詳細な説明を聞いたでし…