あなたへ
四十九日の法要の日、あなたの戒名をいただきましたね。
それは、龍の文字が入った、あなたが、とても気に入りそうな名前でした。
あの日、ご住職は、おっしゃいました。
四十九日が経つと、
亡くなった人の魂は、この世から離れて、あの世へと旅立ちますが、
向こうに行ったままになってしまうのではなく、
龍になって、向こう側とこちら側を自由に行き来できるように、
いつでも、大切な人に会いに行けるように、
そんな想いを込めて、龍という文字を使った戒名を付けました と。
その言葉を聞いて、涙が零れました。
あなたが夢の中で見せてくれた、行ってきますの笑顔の意味が、
ここで漸く、わかりました。
あなたはきっと、知っていたんだね。
四十九日の法要を迎えることが怖かった私の気持ちも、
素敵な戒名をいただけることも、その意味も。
全部知っていたから、きっとあんなふうに笑っていたんだね。
四十九日の法要を終えて、自宅へと戻ると、
それまでに感じていた空気の重さはなくなり、
また以前の空気へと戻っていました。
此処に、あなたは、もういない
そう感じるのに、何故だか悲しい気持ちを見つけることはないままに、
部屋の中の空気が軽くなったように、私の気持ちも軽くなったのでした。
あれから、はっきりとしたあなたのその存在を感じることはなくなりましたが、
例えば、運転中に、豪雨に見舞われ、停車出来ずに、
冠水した道路を運転しながら、半泣きで、あなたの名前を呼んだ時に、
例えば、本当に、辛いことがあって、涙を流した時に、
例えば、どうしたら良いのかが分からない程に、困ったことがあった時に、
ふと寂しくなった時に、
あなたが、側にいてくれるような気がします。
あなたは、あの日、龍になり、
真っ直ぐに、天へと昇って行ったのでしょう。
今のあなたはきっと、
私達が本当に、あなたを必要とした時、
或いは、あなたが、望んだ時に、
龍になって、自由に、そちら側とこちら側を行き来しているのでしょう。
きっと、あなたは青色の龍。
大空を飛ぶあなたの姿を、想像してみれば、
格好良いでしょ?って、ちょっと自慢気に、
気高く、堂々とした姿が思い浮かびました。
もしも、その姿を、この瞳に映すことが出来たとしたのなら、
私はきっと、あなたに惚れ直してしまうのでしょう。
最高に格好良いねって。