それは 彼がいなくなり 間もなくの事だった
小さな 丸いお菓子を全部食べたら
彼のところに行ける
という夢を見た
手元を見ると 半分程を食べた そのお菓子があった
あと残り半分を食べれば 彼のところに行けるんだ
そう思って
私は そのお菓子を見つめていた
それは 死など 不吉な意味はなく
ただ 彼の側に行けるというものだった
私は ただ彼と3人で一緒にいたいだけだった
すると 彼は突然目の前に現れ 私に言った
まだこちらに来てはいけないよ と
私が先に行っても あの子がいつ来られるか 分からないらしい
彼の言葉に私は
じゃぁ 夢の中で 時々3人で一緒に過ごせれば それでいいよ
そう伝え
お菓子を食べる事を諦めた
あれは
夢の中で これは夢だ と知りながら
彼と話している不思議な夢だった
あれから時々
彼とあの子と私の家族3人で 楽しく過ごす夢を見る
それは
日常であったり
どこかへ出掛けている事もある
彼の夢から覚めた私は
いつでも 温かい気持ちになる
そんなふうに目覚めた朝は
逢いに来てくれたんだね 楽しかったね と
寝癖のまま 彼の遺影に話しかけてみる
「時々 夢の中で3人で過ごしたい」
あの夢の中 伝えた 私の最後の我儘を
彼は聞いてくれたのだろうか