あなたへ
こちらは、随分と暖かく、
過ごしやすい季節になってきました。
今日は雲ひとつない青空。
透き通るような空を見上げ、
毎年、庭に立てていた鯉のぼりを思い出しました。
あの子が生まれ、
元気に育ちますようにと願いを込めて、
毎年、立てた鯉のぼり。
小さかったあの子が、
空高く泳ぐ鯉のぼりを、
眩しそうに見上げていたあの頃を、
覚えていますか?
お話が上手になると、
黒い鯉のぼりはパパ
赤い鯉のぼりはママ
青い鯉のぼりはボク
3人並んで泳いでるね
そんなふうに、
嬉しそうに眺めていましたね。
あなたを見送るまで、
毎年立てていた鯉のぼりが、
青空の下、泳ぐ姿は、
またいつか、見る機会は、あるでしょうか。
鯉のぼりの季節には、
密かに毎年、思い出していた、
あなたのエピソードがあります。
いつだったか、あなたが小さかった頃の、
鯉のぼりの思い出話を
聞かせてくれた事がありましたね。
それは、5月の節句が終わり、
片付ける前に、廊下に干した鯉のぼりの横で、
お昼寝をしていた小さかった頃のあなたの話でした。
鯉のぼりに食べられる夢を見て、
大泣きした事があったよ なんて。
私の知らない、あなたの幼少期の話は、
なんだか不思議で、聞いていて飽きなかった。
そんなにかわいい頃もあったのにね
なんて、憎まれ口を叩いた私に、
「あったのにね」って何?なんて
あなたは、笑っていましたっけ。
こちらでは、端午の節句も、間近になりました。
あの頃の青空の下、
優雅に泳ぐ、あの子の鯉のぼりを、
3人で眺めた事、
あなたは、覚えているでしょうか。
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