あなたへ
あの子が武道を始めてから、6年目になりました。
高校生活にも、すっかり慣れたあの子は、
緊張感が解れたのか、
夜更かしをし過ぎて、朝が辛そうだったり、
学校から帰ると、お稽古の日にも関わらず、
疲れたから、お稽古は休みたいと、横になってしまったりと、
なんだかちょっと、
ダラけ過ぎているように見えました。
暫くの間、様子を見ていましたが、
先日、いつまで経っても状態の変わらないあの子を叱りました。
ダラダラと続けても意味はない
やる気がないのなら辞めなさいと。
そんな私の言葉に、反抗気味だったあの子。
あの日、あの子は、半分怒りながら、お稽古へと出掛けたのでした。
そうして、お稽古が終わり、
ちょっと、落ち込んだ様子で、帰って来きたあの子。
その日の練習は、今までになく、とても厳しく、
何故できないのだと、
先生から、凄く叱られたのだと話してくれました。
普段は、優しい先生。
近頃の、あの子のダラけた気持ちが、
先生の目に、はっきりと見えてしまったのでしょう。
帰ってからのあの子は、近頃の自分の様子に、反省しているようでした。
真剣さが、足りなかったと。
あれから、次のお稽古の日の事でした。
今日も叱られるのかな、なんて言いながらも、
嫌そうな様子もなく、元気に出掛けて行きました。
その背中に、ふと、思いました。
いつの間に、あんなに強くなったのだろうかと。
小さな頃は、泣き虫で、甘えん坊だったあの子。
時に弱音を吐きながら、後ろ向きになってしまう事もあったけれど、
それでも一所懸命に、前へと進んで来きました。
あの日の背中に、
いつの間にか、強さを身につけたあの子の成長を、
垣間見ることが出来ました。
そして、
私はあの子を、1人で育てているのではなく、
色々な人に助けて頂いているんだと感じました。
あれからのあの子は、
また、真剣に武道に取り組むようになりました。
ひとつの事を長く続けていく事は、
とても大変な事ですが、
あの子は、武道を辞めるという選択はしなかったようです。
時々には、また迷ったり、立ち止まったり、
繰り返しながら、
ひとつずつ乗り越え、あの子は少しずつ成長していくのでしょう。