あなたへ
先日、来年用の手帳を買いました。
新しい手帳を買うと、
まずは、2月5日のページを開く私は、
毎年のこの時期、
あなたの誕生日を知った日のことを思い出します。
あなたと出会って、初めての秋。
翌年用の可愛い手帳を買ったばかりの私は、
あなたに見せたくて、新しい手帳を持って、あなたに逢いに行きました。
ねぇ見て、可愛いでしょ?
そんな私の言葉にあなたは、
来年の手帳買ったんだ?可愛いね
そう言って、私の手帳を眺めると、言いましたね。
俺の誕生日はね って。
そうなんだ?
なんて、聞き流す振りをした私に、
え?手帳に書いてくれないの?って、
あの時のガッカリしたあなたの顔が、可笑しかった。
あの日、家に帰ってから、
新しい手帳に、いちばん始めに書き込んだのは、あなたの誕生日でした。
お気に入りのペンを使って、
お気に入りのシールを貼って、
可愛く仕上げたその日は、
あの日から、私にとって、いちばん大切な日になりました。
あれからの毎年、新しい手帳を買うと、
私は、決まって、
いちばん始めに、あなたの誕生日のページを開くようになりました。
そして、毎年、
あの日のあなたの、ガッカリした顔を思い出して、笑ってしまいます。
あの時、何故すぐに、あなたの誕生日を手帳に書かなかったのかって?
だって、
あなたに見られていたら、恥ずかしくて、書けません。
ハートマークで派手に飾った、あなたの誕生日。
どんなふうに、お祝いをしようかとか、
あなたの喜ぶ顔を想像する私の顔は、
絶対に、見られたくありませんでしたから。
新しい手帳。
いちばん始めに2月5日のページを開くのは、
これで、20回目になりました。
あなたが何処にいても、私にとって、特別な日。
こうして、新しい手帳を開くと、
あの頃のあなたに、逢えるような気がします。
俺の誕生日はね、2月5日だよ って。
低く、優しいあなたの声が、聞こえるような気がします。