あなたへ
あれは、私の誕生日のことでした。
誕生日プレゼントに、
今度、食事をご馳走してあげるよ
そんなふうに言ってくれていたあの子。
あれから、約半年が経った先日、
あの子が食事に誘ってくれました。
誕生日プレゼントに食事に行く約束していたの覚えてる?
遅くなって、ごめんね
やっと、一緒に行けるよ
日々、忙しいあの子が、
ちゃんと約束を覚えていてくれたことに、
なんだか、とても、感動してしまいました。
遅くなったけれど、
改めて、誕生日おめでとう
席に着くと、
まずあの子は、そんなふうに声を掛けてくれました。
あの子と出掛けた場所。
それは、あなたと一緒に過ごした場所でした。
このお店には、
お父さんと、どんな思い出があるの?
食事をしながら、不意に聞かれたあの日の思い出。
あれは、あなたと出会って、2番目の冬。
クリスマスに、指輪をプレゼントしたいな
そんなふうに言ってくれたあなたと過ごした日。
色々なお店を回りながら、
翼のデザインが施されたペアリングに決めたのでした。
その帰りに、あなたと食事をしたあのお店。
素敵な指輪が見つかって、嬉しかったことや、
他愛のない話をしながら、
あなたと過ごした大切な場所。
あの日のあなたとの思い出を話して聞かせると、
あの子は、言いました。
素敵な思い出の場所なんだね って。
あなたと出掛けた日は、とても寒かったけれど、
あなたの手が温かかったこと
あなたの言葉
あなたの笑顔の向こうに見えた景色
あの日、あの子は、食事と共に、
あなたと過ごした大切な日を、
鮮明に思い出す時間をプレゼントしてくれました。
私の話を聞きながら、
結婚する前の私たちが、どんな2人だったのかを、
思い描いていたのであろうあの子が言いました。
俺もいつか、大切な人を連れて、
こんなお店に行く日が来るんだろうな と。
きっといつか、あの子にもそんな日が来るのでしょう。
偶然を装って、突然に出会った運命の人と。
私たちが、そうであったように。