あなたへ
今日は、あなたが此処に生まれた日。
あなたと出会ってから、毎年、この日にお祝いをしてきましたね。
お誕生日おめでとう って。
あなたを見送ってからは、
感謝を込めて、あなたにありがとうを伝える日へと形を変えて、
あの頃と変わらずに、パーティを開いています。
昨日、送った招待状は、
ちゃんと、あなたの元へ届いたでしょうか。
先月から、今日のためのメニューを考えながら、
あなたと過ごした最後のお誕生日のことを思い出していました。
もうすぐ、お誕生日だね
何か食べたいものはある?
私からのそんな質問に、あなたは言いましたね。
杏仁豆腐が食べたいな って。
思いもよらなかった、あなたからのリクエスト。
お菓子作りが好きな私ですが、
杏仁豆腐は一度も作ったことがありませんでした。
あなたのパーティの日に、絶対、失敗は出来ない
練習するための時間を見つけられないまま、
あの年は、市販のものを準備したのでした。
パーティ当日、杏仁豆腐をテーブルに並べると、
手作りが良かったなぁ
なんて、なんだかちょっぴり、がっかり顔をしたあなた。
練習する時間がなかったから、今年は、ごめんね
来年は手作りに挑戦するよ
あの年、あなたと、そう約束したのでした。
あなたを見送り、
私の中から抜け落ちてしまった、あなたとのたくさんの思い出を、
ひとつひとつ、拾い集めてきた私は、
あの日の、あなたとの時間をまたひとつ、拾い集めました。
あなたとの約束を思い出した私は、密かに杏仁豆腐を練習し、
無事に今日を迎えることが出来ました。
初めて杏仁豆腐を作った日には、
ほぼ味のない、見た目だけが杏仁豆腐のもの出来上がりました。
美味しそうだね
なんて喜んで食べてくれたあの子の口から出た言葉は、
食感だけが杏仁豆腐だね
こんなの初めて・・・って。
今となっては、笑い話ですが、
失敗してしまったのも、なんだか楽しかった。
丁度、5年前、あなたとした今度の約束。
今日、あなたのために、
杏仁豆腐を作ることが出来て良かった。
今日は、あなたのことを想い、
いつも守ってくれているあなたへ、たくさんのありがとうを伝える日。
あなた、いつもありがとう。
寂しい時、
きっと側に寄り添ってくれていること。
自信が持てない時、
きっと、すぐ側で励ましてくれていること。
あなたがこの世界に生まれてきてくれたことも、
私と出会ってくれたことも、
全部、
全部ありがとう。
今年も、きっとパーティに参加してくれたあなたへ、
愛を込めて。
ありがとう。