例えば
焼きそば
茹でうどん
冷やし中華
豆腐
納豆
それから
プリン
ゼリー
ヨーグルト
スーパーで買い物をしながら
3個で1セットのものが多いように感じたのは
いつのことだっただろう
1セットで家族3人分
それは我が家にとって 丁度良い数だった
私の買い物カゴの中には
当然のように
色々な3人分のものが入っていた
2人分と小さく書かれた焼きそばを見つけたのは
彼を見送り
どれくらいが経った頃だっただろう
その時 初めて
売り場をよく見渡して
2人分のものも色々と売っていることを知った
それまで目に付かなかったのは
無意識のうちに3人分を探していたからなのか
それとも種類が豊富になったのが最近なのか
それすらよく分からないくらいに
それまでの私は
2個がセットになっているものへは
目がいかなかったような気がする
初めてそれらをみつけた日には
その主張を控えて
誰かが手に取るのを
ひっそりと
そこで待っているように見えた
あぁ・・・2個のものもあるんだ
そう認識しながらも
相変わらず
3個がセットになったものへ手を伸ばすのは
変化を望んでいないからだ
買い物カゴの中まで 2人になりたくない
せめてこの中だけは
家族3人のままでいたい
私の買い物カゴの中は
あの頃と
とてもよく似ている
カゴの中を覗いてみれば
あの頃と同じ 当たり前が存在する
あの頃と違うのは
ほんの少しだけ
胸の奥が掴まれるような痛みがあることだ
皆と同じように
平然とした顔をして
レジに並びながら
自分のカゴの中を覗いては
こっそりと
あの頃の自分と重ね合わせる
3人家族に見えるかな
時々そんなことを考えてしまうのは
何故だろう
きっと誰も見ていないのに
そんなことを思いながらも
私だけが気になる家族3人の形
前に進むことをやめた 私の買い物カゴの中
ここから一歩 前へ進む日は
ちゃんと決めている
だからそれまでは
ここから一歩たりとも前へは進まない
これは
誰にも話したことのない
私だけの
あの頃のままの時間だ