あなたへ
子供が高校生になると、旦那のお弁当も作るようになるのよね
こんな話を聞いたのは、あの子が高校生になってから、
どのくらいが経った頃だったでしょうか。
皆の談笑に耳を傾けながら、
もしも、あなたが此処にいてくれたのなら、
私も、皆と同じように、あなたの分のお弁当も作っていたのだろうかと、
毎朝、2人分のお弁当を作る自分の姿を、想像したのでした。
あの子のお弁当作りの日々を終え、
なんだか、物足りなさを感じる中で、
ふと思い出した、いつかの話。
私が経験することが出来なかった時間を、ただ想像するだけの私でしたが、
それなら、2人分のお弁当を作ってみようだなんて、
突然、思いついてしまったのです。
だから、今日はね、
朝から張り切って、お弁当を作ったの。
早々に、あなたの場所へお供えした、愛妻弁当。
あなたが好きなもの、たくさん入れたよ。
ハートに切り抜いたハムも、ちゃんと食べてね。
初めて経験した、2人分のお弁当を作る朝の時間は、バタバタとしながらも、
幸せな気持ちが、2倍になりました。
いつもの朝は、
おはよう
行ってきますって、あなたに声を掛ける私ですが、
今日だけは、
あなた、お弁当持った?
いってらっしゃい
そんなふうに、声を掛けてもいいですか。