拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたの願いが叶いました【5】

 

「なんだね?そのハッキリしない態度は!

はぁ・・・人間は分からんわ。

さっぱり分からん!ハッキリしなさいよ!

この爺が、わざわざその願いを叶えに来てあげたというのに、全く・・・

あなたねぇ、

それなら、何故、空を見上げて、彼に逢いたいなどと言いながら泣くのじゃ?

泣いてばかりいるくらいなら、一度、その逢いたい人とやらに逢いなさいよ!

いや!逢うべきだ!

・・・

なんだね?その顔は?

この爺を疑っているのか?何も知らないくせにと?

この爺が何も知らないとでも?

知ってるとも、知ってるとも。

あぁ!よく知ってるとも!」

 

顔を真っ赤にして怒りながら、

私が時々、彼の名前を呟きながら、

こっそりと泣いていることを知っているのだと言う。

 

「さあ!早く!出掛けますよ!」

早口で捲し立てたかと思えば、はあはあと肩で息をしている。

 

はぁぁ・・・

 

大きくひと息ついたかと思えば、指を鳴らす音と共に、

私の着ているものは、パジャマから、白のワンピースへと変わっていた。

思わず立ち上がり、マジマジと、今着ているものを眺めてみた。

そうして、次の瞬間には、

カーテンが開き、施錠していたはずの窓が大きく開け放たれた。

部屋の中に、夜の空気が入り込む。

 

「おっと、乗り物は・・・これが良かろう。」

そう言って、ポケットの中をゴソゴソとしながら取り出したのは、

マザーリーフだった。

窓際に立って、ゆっくりとマザーリーフを宙に浮かべると、

再び、パチンと指を鳴らした。

 

すると、どんどんマザーリーフが大きくなっていく。

窓の外には、空飛ぶ絨毯のように、大きくなったマザーリーフが浮いている。

 

なにこれ?

驚きのあまり、声も出ないまま、立ちすくむ私の背中を押して、

大きなマザーリーフへと乗せ、座らせると、おじいさんも、隣に腰を下ろした。

 

「さて、漸く出発じゃな。では、願いをわしに!

さぁ、何処へ行きたいのじゃ?」

 

さっきから目の前で起こることに頭がついていかない。

そして、外気に晒されながら、ただ浮いている場所というのは、とても怖い。

ここは、大きな葉っぱの上だ。

掴まる場所など何もない。

 

これに乗って彼のところまで行くの?

 

戸惑いと、恐怖が入り混じる中、

これから彼に逢えるのだという喜びと、緊張をみつけた。

 

今から、彼に逢えるの?

本当に、逢えるの?