「なんだね?そのハッキリしない態度は!
はぁ・・・人間は分からんわ。
さっぱり分からん!ハッキリしなさいよ!
この爺が、わざわざその願いを叶えに来てあげたというのに、全く・・・
あなたねぇ、
それなら、何故、空を見上げて、彼に逢いたいなどと言いながら泣くのじゃ?
泣いてばかりいるくらいなら、一度、その逢いたい人とやらに逢いなさいよ!
いや!逢うべきだ!
・・・
なんだね?その顔は?
この爺を疑っているのか?何も知らないくせにと?
この爺が何も知らないとでも?
知ってるとも、知ってるとも。
あぁ!よく知ってるとも!」
顔を真っ赤にして怒りながら、
私が時々、彼の名前を呟きながら、
こっそりと泣いていることを知っているのだと言う。
「さあ!早く!出掛けますよ!」
早口で捲し立てたかと思えば、はあはあと肩で息をしている。
はぁぁ・・・
大きくひと息ついたかと思えば、指を鳴らす音と共に、
私の着ているものは、パジャマから、白のワンピースへと変わっていた。
思わず立ち上がり、マジマジと、今着ているものを眺めてみた。
そうして、次の瞬間には、
カーテンが開き、施錠していたはずの窓が大きく開け放たれた。
部屋の中に、夜の空気が入り込む。
「おっと、乗り物は・・・これが良かろう。」
そう言って、ポケットの中をゴソゴソとしながら取り出したのは、
マザーリーフだった。
窓際に立って、ゆっくりとマザーリーフを宙に浮かべると、
再び、パチンと指を鳴らした。
すると、どんどんマザーリーフが大きくなっていく。
窓の外には、空飛ぶ絨毯のように、大きくなったマザーリーフが浮いている。
なにこれ?
驚きのあまり、声も出ないまま、立ちすくむ私の背中を押して、
大きなマザーリーフへと乗せ、座らせると、おじいさんも、隣に腰を下ろした。
「さて、漸く出発じゃな。では、願いをわしに!
さぁ、何処へ行きたいのじゃ?」
さっきから目の前で起こることに頭がついていかない。
そして、外気に晒されながら、ただ浮いている場所というのは、とても怖い。
ここは、大きな葉っぱの上だ。
掴まる場所など何もない。
これに乗って彼のところまで行くの?
戸惑いと、恐怖が入り混じる中、
これから彼に逢えるのだという喜びと、緊張をみつけた。
今から、彼に逢えるの?
本当に、逢えるの?