初めて連れて来られた天国という場所は、
非常に分かりやすく、大きな看板が建ててあった。
『天国』
私の半歩後ろを歩くおじいさんは、看板を見上げながら、
この看板は、見る人が使う言語に合わせて、文字が変化するのだと教えてくれた。
大きな看板の横を通り抜けると、見上げるほどに大きな扉があった。
恐る恐る扉の前に立つと、触れる前にその扉が開かれた。
「お待ちしておりました。こちらで手続きをお願いします。」
にこやかな白髪の老人に迎えられた。
お待ちしてたんだ?
少し驚きながらも、今夜の不思議な出来事の数々に、
私は、あまり動じることがなくなっていた。
今夜は、私が知る常識は、何もかもが通用しないようだ。
受付らしき場所で、聞かれるままに、
彼の生前の名前と、生年月日、命日を伝えると、
龍の間でお待ち下さいと案内されながら、
星のモチーフがついたペンダントを渡された。
これは、入国許可証のようなものだそうだ。
早速、ペンダントを首に掛けながら、
『龍の間』と記された部屋へと向かった。
ドアを開けると、中は、とてつもなく広い部屋だった。
私が部屋へと入ると、おじいさんも半歩遅れて部屋へと入って来た。
部屋の中へ入るとすぐに、中央へ向いた大きめのソファーが置かれている。
ソファーと対面する遥か向こう側の壁には、
丁度、人が通れるほどの大きさで、アーチ型に光る場所があった。
ソファーと、壁の一箇所が光っている以外、何もない部屋だったが、
私たちは、部屋中を見回してから、漸く、ソファーへと座った。
「そのペンダントが時間を教えてくれる。
光が強くなったら、時間じゃ。」
おじいさんの言葉に頷き、弱く七色に光る星にそっと触れた。