あなたへ
先日、久し振りに、少しだけ晴れ間が見えたものの、
こちらでは、連日、雨音が聞こえます。
雨音を聞きながら、
家族3人で過ごした、あの家での時間を、思い出していました。
また雨か って、残念そうなあなたの声と、
窓の外を覗くあの子の姿。
今日は、天気が悪いから、DVDでも借りに行こうか
こんなあなたの声に、喜ぶあの子の姿。
部屋で戯れ合う、あなたとあの子。
そんな2人を笑って見ている私に、あなたは言うの。
こっちにおいでって、私の手を引きながら。
雨の日の部屋の中は、
家族3人、戯れ合いながら、笑い声で、いっぱいだったね。
ねぇ、あなた。
何故でしょうか。
雨音を聞きながら、蘇るのは、
あの家での、家族3人の思い出ばかりで、
結婚する前の私たちの、雨の日の記憶が、みつかりません。
あの頃だって、きっと、雨の日もあったはずなのに、
記憶に蘇るのは、晴れの日や、曇り空の日ばかりなのです。
今日は天気が悪いから、今度にしよう
こんなふうに、約束を延期したことなど、
一度もなかったはずなのに、
どんな天気の日にも、思い出をみつけることが出来るのは、
あなたと家族になってからの時間なのです。
家族になるってさ、
晴れの日も、
雨の日も、
雷の日も、
雪の日も、
どんな天気の日にも、
いつも、同じ場所から、同じ空を見上げながら、
思い出が増えていくってことなんだね。
あなたと家族になれたから、
雨音を聞きながら、こんなにたくさんの記憶が、蘇るんだね。
幾つもの雨の日がくれた、
あの頃の幸せのカケラを、
もう一度、
この胸へと刻み直して。