拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

映画館

あなたへ

 

夏に、映画やるんだね

3人で、観に行こうね

 

こんな約束をしたのは、あの年のことでした。

 

いつの頃からか、

あの子が大好きなアニメの映画を、家族3人で観に行くことが、

恒例行事となっていた我が家ですが、

今後のあの子の成長を想像しながら、

3人で映画を観に行けるのは、きっと、これが最後かなって、

あの約束をした時の私は、

実は、そんなことを考えていました。

 

だから、その時間を大切に過ごしたいな って。

 

3人で、観に行こうね

 

あの頃の今度の約束は、叶うことがないままに、

あなたが息を引き取ったのは、

映画の公開日のことでした。

 

いつ観に行こうかって、具体的な約束をするはずだったのに、

私たちは、あの日、たくさんの涙を流しました。

 

あれから、告別式を終え、

あなたがいないままに、日常生活へと戻ると、

私は、あの子との今度の約束を叶えることにしました。

 

あの映画を観に行こうよ って。

 

映画を観に行った日のことを鮮明に思い出したのは、

先日、テレビで、あの映画が放送されたからでした。

 

テレビを観ながら、ふと思い出したのは、

あの子と2人で歩いた、映画館までの道のりでのこと。

 

あれは、丁度、横断歩道を渡っていた時のことでした。

 

横断歩道の向こう側にある鏡張りの建物に、

一瞬、映って見えた気がしたのは、

私のすぐ後ろを歩くあなたの姿。

 

驚きながら、慌てて後ろを振り返ったけれど、

そこには、誰もいないままに、

落胆して、前を向いたあの日の出来事は、

此処からいなくなってしまったあなたの姿を、

私はきっと、探していたのだと、

そんなふうに理由を付けて、

記憶の隅へと仕舞い込んでいた出来事でした。

 

あなたを見送ったあの年から、

時々起こる不思議な出来事を思い返してみれば、

あの日、一瞬見えた気がしたのは、

やはり、あなただったのではないかと、

今の私には、そんな気がしてなりません。

 

3人で、観に行こうね

 

今度の約束をしたあの頃のあなたも、きっと、

胸の奥で、私と同じことを考えていたのかも知れないな って。

 

思い返せば、

あの頃の私が思っていた通り、

あの子と一緒に映画館へ行ったのは、あれが最後となりました。

 

映画館までの道のりで、後ろを振り返った私は、

溢れそうな涙を堪えて、前を向いたけれど、

あなたは、私たちが思っていたよりも、

ずっと、側にいてくれたのでしょうか。

 

あの夏に聴こえた映画の主題歌が思い出させてくれたのは、

鏡の向こう側に見えた、家族3人の形。

 

あれが、あの日の私たちの、

本当の姿だったのかも知れませんね。

 

 

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