あなたへ
私たちの結婚式の、衣装を選びの日に撮った写真を眺めていました。
これは、2015年の私から、
次にこの手帳を開いた日の私への贈り物。
辛く苦しい記憶ばかりが残るあの年の手帳の文字は、
これまで、一度も辿れずにいましたが、
あの年の私も、ちゃんと幸せのカケラを集めることが出来ていたようです。
あの年の私が、掃除をしながら、
この写真を見つけた日のことを思い出しました。
得体の知れない何かに追われていたあの頃の私は、
静かに、ゆっくりと写真を眺める時間さえ取れないままに、
いつか、静かな時間がやって来たら、この写真を眺めてみたいと、
こんな気持ちで、そっと、手帳に写真を挟んだのでした。
あなたは、この写真を撮った日の2人のことを覚えているでしょうか。
あの日、店内へ入ると、まず初めに、私の目を引いたのは、
男性用の新作の衣装でした。
落ち着いたワインレッド系で、スタイリッシュなデザインのタキシード。
お色直しの時は、絶対にこれがいい
きっと、あなたに似合うだろうな
ドレスを見るよりも先に、
お色直しの時のあなたの衣装を、こっそりと、私の中で決めたこと、
あなたは、気付いていたでしょうか。
挙式用には、黒のフロックコートと白のドレス。
後ろ姿が綺麗に見えるデザインが施された白のドレスは、私の一目惚れでした。
カラードレスは、あなたの衣装に合わせたデザインのものを。
ねぇ、あなた。
衣装を選びに行ったの日の私たちが、
どんな顔をして写真に写っていたか、覚えていますか。
あの日の私たちは、衣装を試着すると、何枚かの写真を撮りましたが、
どの写真に映る顔も緊張の面持ちで、
あなたも私も、ひとつも笑ってはいないの。
結婚式の写真のどれもには、笑顔ばかりが溢れていたけれど、
衣装を選びに行った日には、何故だか緊張し過ぎて、こんな顔をしていたんだなって、
なんだか、笑ってしまいました。
永遠の愛を誓い合う一歩手前の私たちは、
全然、笑えずにいたけれど、
本当に、幸せだったね。