あなたへ
あなたは、きっと、何処かにいる。
ただ、その姿が見えないだけ。
これは、あの夏からの私たちが、強く感じてきたことでした。
思えば、その姿が見えないままに、
側にいるよと、そう教えてくれたのは、
息を引き取った日のあなたでした。
あの日のあなたは、きっと、
あの不思議な現象に、私たちが、少しだけ笑ってしまったことを、
すぐ側で、見ていたんだね。
泣きながらも笑った私たちを、すぐ側で見ていたから、
何度も、あの不思議な現象を起こしたのでしょう?
あの子も私も、直ぐに分かったよ。
こんなことをするのは、あなたしかいないって。
あの日からのあなたは、時々、
私たちにだけ分かるような不思議な現象を起こしては、
側にいることを伝えてくれましたね。
私たちの目には見えなくても、
あなたは、きっと何処かにいるのだと、
そう確信するには、十分過ぎる材料を集めてきましたが、
私たちは、あなたの本当の居場所を知りません。
例えば、周波数を合わせるみたいに、
何かが、上手く噛み合った時、
今のあなたと話をすることが出来るのでしょうか。
あなたチャンネルが、何処かにあるのかも知れない
ふと、そんな気がして、今日の私は、空を見上げて、
どう合わせたら良いのかも分からないままに、
あなたの声を探しました。
何処にいるの?
どんなに問い掛けてみても、
そこに答えは聞こえませんでしたが、
胸の奥に、ふと蘇ったのは、私を呼ぶ、あなたの声でした。
私の探すあなたチャンネルを見つけることは出来なかったけれど、
今日もまた、あなたはきっと、何処かにいることを確信して。
もしもいつか、あなたチャンネルを見つけることが出来たのなら、
あなたは、どんな話を聞かせてくれるのだろう。
目を閉じて、楽しげなあなたの声を、思い描いてみる。