拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたの名前を書く時間

あなたへ

 

あなたの名前を最後に書いたのは、いつだっただろう。

 

ふと、こんなことを考えた私は、

手帳を開いて、あなたの名前を書いてみました。

 

私のこの人生の中で、こんなふうに、

あなたの名前を書く機会は、どれほどあったでしょうか。

 

例えば、母子手帳をもらった日には、

父の欄へ、あなたの名前を書き込みました。

 

生まれて初めてもらった母子手帳。

 

お気に入りのペンを使って、

父、母の欄に、私たちの名前を書き込んだのは、

なんだかちょっと、擽ったくて、とても嬉しかった思い出。

 

例えば、

あの子が幼稚園へ上がった時、

小学校へ上がった時、

中学校へ上がった時。

 

あの子が成長する度に、

あなたの名前を書く機会は、当たり前に訪れました。

 

学校へ提出するための膨大な量の書類作成は、

少し、面倒にも感じていたけれど、

書類の数だけ、当たり前に、あなたの名前を書き込みました。

 

私のこの人生の中で、当たり前に、

あなたの名前を書く機会は、何度くらい、あったのだろう。

 

あなたを見送り、もう、ここに、

あなたの名前を書く機会は、ありません。

 

高校へ提出した書類も、

専門学校へ提出した書類も、

当たり前に、2人分の枠が並んだ保護者氏名の欄に、

私の名前だけを書き込んで、淡々と書類を作成しました。

 

ひと枠空いた保護者氏名の欄に、酷く、胸が痛んだけれど、

慣れなければいけないことなのだと、言い聞かせて、

感情に蓋をした時間でした。

 

私が最後に、あなたの名前を書いたのは、

いつのことだっただろう。

 

あなたの名前を書いてみたくなって、手帳を開き、

丁寧に、時間を掛けて、あなたの名前を書いてみました。

 

大切な人の名前を書くのって、

こんなにも、愛おしい時間だったんだね。

 

私の大切な人の名前は、とても素敵な名前。

 

あなたの名前を指で辿った私は、

あなたの名前の隣に、私と、あの子の名前を書き込みました。

 

今年の手帳。

2021年7月2日のページに、そっと、家族3人の形を残して。

 

いつか、ずっと先の未来の私が、

この手帳の今日のページを開いたのなら、

あなたの名前を書きながら、

ただ、その時間を愛おしく感じた今日の日のことを、

思い出すのでしょう。