拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

そちら側との境界線

あなたへ

 

遺影はきっと、とても特別な写真。

 

あなたは、なんだかとても、不思議だね

 

あなたを見送ってからの私は、

何度、こんなふうに語りかけてきたでしょうか。

 

先日、またひとつ、

遺影は、きっと特別な写真なのだと、そう確信が持てる出来事がありました。

 

あれは、先日、実家へ顔を出した時のことでした。

父に手を合わせながら、遺影の中の父の表情を見て、とても驚きました。

 

当初の遺影の中の父は、

真っ直ぐにこちらを見つめるその表情に、

穏やかさや、柔らかさは感じられずに、

怒っているとも、機嫌が悪いとも、少し違う、

何か、深刻さが感じられるような、

悲しげな重さを纏った表情をしているように見えていました。

 

誰の目にもそう見えていたのか、

私にだけ、そう見えていたのかは分かりませんが、

硬い表情のまま、こちらを見つめている気がする父の姿に、

何か、言いたいことがあるのかも知れないと、

その姿をじっと見つめて、父の想いを探しました。

 

どんなにその想いを探してみても、私には、

見つけることの出来ないままに、それまでの時間を過ごして来ましたが、

先日の父のその表情が、驚くほどに、柔らかな表情へと変わっていたのでした。

 

お父さん、私ね

 

胸の中で語りかけた私の声に、優しく頷くかのような、

温かで、柔らかな父の姿を見つめながら、私の中に、

良かったなって、そんな喜びにも似た気持ちを見つけました。

 

やはり、遺影は、特別な写真なのでしょう。

 

当初の父の想いを見つけることは出来なかったけれど、

きっと、今の父は、

穏やかな気持ちで、そちら側にいるのだと、

そんな父の心の変化を見つけたように思いました。

 

いつも、ここから見てるからね

 

夢の中、遺影の中のあなたが、こんな言葉を私にくれたのは、

いつのことだったでしょうか。

 

あなたがくれたその言葉に、

とても安心したこと、今でも、よく覚えています。

 

いつも穏やかに微笑んでくれるあなただけれど、

時に、笑いを堪えるようにこちらを見つめていたり、

困った顔を見せたり、

私と一緒に、悲しい顔をしていたり。

 

遺影の中のあなたの顔は、いつでも同じわけじゃない。

きっと、夢の中のあなたの言葉は、本当なのでしょう。

 

遺影は、きっと、とても特別な写真。

 

あなたの顔をじっと見つめてみる。

僅かな動きも逃さぬように、瞬きをせずに、じっと見つめてみれば、

今にも吹き出しそうな顔をして、こちらを見つめ返すから、

なんだか、笑ってしまうよ。

 

今なら、その頬に触れられるような気がして、

そっと静かに、あなたの遺影に手を伸ばしてみたけれど、

此処から先へは立ち入ることが出来ないのだと言わんばかりに、

硬いガラスの感触が指先を僅かに冷やして。

 

もしも、遺影がそちら側と繋がる場所であるのなら、

きっと、このガラスは、そちら側との境界線なんだね。

 

それでも、いつか、あなたに触れられるような気がして、

きっと私は何度でも、

あなたのその頬に、その髪に、手を伸ばしてしまうのでしょう。

 

 

 

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