拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

強くなりたい

あなたへ

 

私ね、頑張ってるよ

 

こんな私の小さな声は、

風に乗って、あなたのところまで届いたでしょうか。

 

強くなど、なりたくない

なんでも出来るようになど、絶対にならない

そうすれば、

あなたは絶対に何処にも行かない

 

決して口には出せないままに、

本気でそう考えていたのは、あの夏の私。

 

あなたの側に寄り添っていた、

あの夏の私を思い出していました。

 

なにも出来ない私を置いてなど、

絶対に、あなたは、何処へも行かないと、そう信じて、

とても小さな一歩を踏み止まったままの私を置いて、

あなたは、此処からいなくなりました。

 

しっかりと刻みつけたその手の温もりを、

この手に握り締めたまま、

ここから一歩も前へは歩まないと決めたのは、

あれから僅かに残った夏の日のことでした。

 

それなのに、

どんなに強く望んでも、時間は皆と同じように過ぎて行くのだと、

絶望にも似た気持ちに向き合わなければならなくなったのは、

過ぎ行く季節を見送ってから、

どのくらいが経った頃だったでしょうか。

 

あの頃の私は、

あの子に見つからないように、影に隠れて、ひとりで泣きながら、

あなたのその手の温もりを探して、泣きながら、

あなたがしてきてくれていたことを、ひとつひとつ覚えては、

あなたに手を合わせました。

 

私ね、頑張ったよ

今日は、こんなことをしたよ

 

いつの頃からか、

こんな報告が出来ることが、なんだか嬉しく思えるようになったのは、

あなたが、とても嬉しそうに、微笑んでくれたからでした。

 

なんでも、ひとりで出来る私になりたい

あなたの分まで、あの子を立派に守れる私になりたい

勇しく、前へと歩める私になりたい

あの夏のあなたを守れる私になりたい

 

強くなりたい

 

ほんの少しずつ。

本当に少しずつですが、

強くなることを望むようになったのは、いつの頃からだったでしょうか。

 

ひとつずつ目標を達成し、

進化を遂げれば、遂げるほどに、

次の目標への道のりは、どんどん険しくなっていきました。

 

その厳しさに、ため息を吐いたり、

時には自信を失くしてしまったり、

立ち止まっては、涙を流して、あの夏のあなたを探してみたり。

 

あなたの名前を呼んでは、何処かにあなたを探してしまうのに、

どんなに立ち止まろうとも、自分を奮い立たせては、

強くなりたいと望むようになったのは、

いつの頃からだったでしょうか。

 

強くなど、なりたくない

なんでも出来るようになど、絶対にならない

 

そう強く望んだあの夏の私は、

こんなに成長することが出来たよ。

 

あの頃の私が知らなかった景色の中で、

ほんの少しだけ、誇れる気持ちで、

梅雨明けの最初の空を見上げてみる。

 

ねぇ、あなた。

私ね、頑張ってるよ。

 

 

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