今年もまた夏が来たよ
空を見上げて
そっと目を閉じてみる
夏の音に耳を澄ませながら
彼と出会ってからの夏を
順番に思い出すのが
夏の始まりの私の恒例となった
この記憶の中を歩くように
幾つもの夏の彼に逢いに行く
初めて出会った夏
2番目の夏
3番目の夏
4番目の夏
幾つもの彼の笑顔を見つけては
ゆっくりと歩を進め
今年の私が足を止めたのは
彼と出会ってから5番目の夏の記憶
あの夏は
家族3人で迎えた初めての夏だった
上手に寝返りが出来るようになったあの子と
楽しそうに遊ぶ彼は
いつも笑っていたっけ
あの子が彼に笑い掛ければ嬉しそうに笑い
あの子がおもちゃに手を伸ばす姿を見ては楽しそうに笑った
パパとママになって
初めて見た夏の景色は
私たちにとって掛け替えのない宝物だね
出会ってから5番目の夏で笑う彼に
そっと手を伸ばして
その頬に触れてみる
あの夏の彼が
どんなふうにあの子に笑い掛けていたのか
あの夏の彼が
どんなふうにあの子に話し掛けていたのか
あの子の記憶には
なにも残ってはいないのだろう
いつかあの子にも話して聞かせてあげよう
あの夏の彼が
どんなにあの子を愛しんでいたのかを
家族3人で初めて見た夏の景色を
もう一度
この胸にしっかりと焼き付けて
瞳を開いてみる
あなたを見送ってから
7番目の夏のあの子も
よく笑ういい子だよ
空の彼方へ
そっと問いかけながら
あの子に笑い掛ける彼の姿を
思い浮かべてみる