今日の私は、酷く落ちている。
時々、こんなふうに、どうしようもない感情が込み上げることがある。
彼に逢いたくて、声が聞きたくて、仕方がない。
こんな発作のような感情を自分でコントロールする方法は、
未だに見つからないままだ。
彼が亡くなってからの私は、不思議な出来事をたくさん経験してきた。
きっとその全ての出来事を私に見せてくれたのは、彼なのだろう。
でも、こんな時の私には、それでは足りないのだ。
不確かで、曖昧で、空気を掴むようなやり方じゃ、納得出来ない。
私は、きっと、ではなく、絶対の確信が、どうしても欲しいのだ。
はっきりとした彼の温もりや、この耳にちゃんと届く彼の声が欲しい。
亡くなった人に、
生きている人と同じものを求めるな、などという最もな正論は、
今の私には通じない。
時間と共に、傷は癒されていく。
こんな言葉を耳にしたことがあるし、そんな経験もしてきた。
でも、大切な人を亡くして負った傷は、それには該当しないのだろう。
この世界の時間がどんなに過ぎようとも、あの夏から何年が経とうとも、
私の中に、過去にはならないあの夏が存在するのだから。
今日の私は、どんなに待ってみても、
この感情から抜け出すことが出来なかった。
ちゃんと探せば、何処かに彼がいるかも知れない
こんな思いを抱えたまま、行き先も決めずに外に出てみれば、
引き寄せられるようにこの公園に来てしまったのは、何故だったのだろう。
・・・えっ?どうして?
こんなことは初めてだった。
いつもなら、私がベンチに座ると間も無くに現れる彼女が、
今日は、私よりも先に来ていたのだ。
まるで、初めから、私がここに来ることを知っていたかのように。
「待ってたわよ。」
私は、彼女に逢いたかったのかも知れない。
彼女を見た瞬間に、一気に涙が溢れ出した。
そんな私を、彼女はそっと抱き締めると、そのまま、泣かせてくれた。
慰めようとも、元気付けるようなことを言うでもなく、
ただ、黙って寄り添ってくれた彼女が作り出す空気の中は、
とても居心地の良い場所だった。