拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

彼女 6

今日の私は、酷く落ちている。

時々、こんなふうに、どうしようもない感情が込み上げることがある。

 

彼に逢いたくて、声が聞きたくて、仕方がない。

 こんな発作のような感情を自分でコントロールする方法は、

未だに見つからないままだ。

 

彼が亡くなってからの私は、不思議な出来事をたくさん経験してきた。

きっとその全ての出来事を私に見せてくれたのは、彼なのだろう。

でも、こんな時の私には、それでは足りないのだ。

不確かで、曖昧で、空気を掴むようなやり方じゃ、納得出来ない。

私は、きっと、ではなく、絶対の確信が、どうしても欲しいのだ。

 はっきりとした彼の温もりや、この耳にちゃんと届く彼の声が欲しい。

 亡くなった人に、

生きている人と同じものを求めるな、などという最もな正論は、

今の私には通じない。

 

時間と共に、傷は癒されていく。

 こんな言葉を耳にしたことがあるし、そんな経験もしてきた。

でも、大切な人を亡くして負った傷は、それには該当しないのだろう。

この世界の時間がどんなに過ぎようとも、あの夏から何年が経とうとも、

私の中に、過去にはならないあの夏が存在するのだから。

 

今日の私は、どんなに待ってみても、

この感情から抜け出すことが出来なかった。

 

ちゃんと探せば、何処かに彼がいるかも知れない

 

こんな思いを抱えたまま、行き先も決めずに外に出てみれば、

引き寄せられるようにこの公園に来てしまったのは、何故だったのだろう。

 

・・・えっ?どうして?

 

こんなことは初めてだった。

いつもなら、私がベンチに座ると間も無くに現れる彼女が、

今日は、私よりも先に来ていたのだ。

まるで、初めから、私がここに来ることを知っていたかのように。

 

「待ってたわよ。」

 

私は、彼女に逢いたかったのかも知れない。

彼女を見た瞬間に、一気に涙が溢れ出した。

そんな私を、彼女はそっと抱き締めると、そのまま、泣かせてくれた。

慰めようとも、元気付けるようなことを言うでもなく、

ただ、黙って寄り添ってくれた彼女が作り出す空気の中は、

とても居心地の良い場所だった。