拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

分解してみよう

あなたへ

 

これ、使えないかも知れない

 

バイクの部品のひとつを眺めながら、難しい顔をしていたのは、先日のあの子。

どこがどうなっているのかは、分からないけれど、

本来であれば、回らなければならない箇所が、何故か回らずに、

苦戦していた様子のあの子は、暫く悩むと、大きな賭けに出ました。

 

分解してみよう

 

これは、例えば、ネジを外して中を確認するなどといった、

単純な作業なんかではありません。

本来、後から外せるようなものではない箇所を、

無理矢理に外すという高度な技を必要とする作業なのです。

万が一、失敗してしまった場合には、その部品は、

完全にゴミになってしまう危険性を孕んだ非常に恐ろしい賭けでした。

 

工具を片手に、真剣な面持ちで、

作業を開始したあの子の姿を見つめながら、思い出していたのは、

小学生だったあの子の夏休みのことでした。

 

電卓や目覚まし時計。

身の回りのものの分解をテーマに、夏休みの自由研究をしたのは、

あの子が小学生の高学年の頃だったでしょうか。

 

お喋りが大好きで、いつでも騒がしかったあの子が、

長い時間、集中して、静かに分解に取り組んでいたその姿は、

それまでの私がたちが気付くことの出来なかったあの子の意外な一面でしたね。

あの時間がなければ、いつもとは違うあの子の側面を見つけることは、

きっと出来なかったのでしょう。

 

あの夏休みのあの子と、

工具を片手に、真剣な面持ちで作業をする目の前のあの子を重ね合わせて見守る中、

部品の分解は、見事に成功し、原因を突き止める事が出来たあの子。

 

なんだ

ここがこうなっていたんだ

 

これから先の私の人生において、

恐らく、二度と見る機会のないであろうその中身を見ることが出来たのは、

私にとって、とても貴重な時間だったと思います。

 

あの子の一か八かの賭けは、見事に成功しましたが、その安堵の時間も束の間に、

あの子の前には、元に戻せるのだろうかと、思わず心配になるほどに、

小さなパーツがたくさん並んでいました。

 

分解をテーマに、自由研究をした夏休みのあの子は、

最後に、組み立てにも挑戦しましたね。

あの時は、幾つかのパーツが余ってしまいましたが、今のあの子は、違いました。

 

大丈夫

俺、どうなっていたか、全部、覚えているから

 

自信満々のあの子の言葉の通り、組み立ても完璧に。

そうして、見事に問題を解決することが出来たのでした。

 

あの時の経験が、今に生きているよね

 

部品を分解しながら、あの子もまた、

私が思い出していた夏と同じ夏を振り返っていたようでした。

 

どこで、どんな経験が生かされてくるのかなど、

本当に分からないものです。

 

今回の問題については、

自分で分解せずに、プロの方に相談する方法もありましたが、

自分でやってみたいのだと、あの子は、大きな勝負に出ました。

 

手を掛け、時間を掛けながら、

乗ってみたいと夢見ていたバイクを組み立てる時間を、

あの子は今、とても楽しんでいます。

 

我が家の廊下をトレジャーロードと呼ぶことにしましたと、

こんな手紙を書いたのは、先日のことでしたが、

あれから、更に幾つかの荷物が届き、

トレジャーロードには、更に宝物が増えました。

 

新しい荷物が届く度に、目を輝かせるあの子を見守りながら、

あの日、あの子の背中を押すことが出来て、本当に良かったなと、

改めて感じる今日この頃です。

 

 

 

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