あなたへ
先日から、あの子の学校への登校が少しずつ始まりました。
休み時間には、久しぶりに会えた友人と、
オセロをして遊んだそうですよ。
俺はね、オセロは誰にも負けない自信があるんだ
これまでも、誰にも負けたことがないしね
自信満々に、こんな話をしてくれたあの子の言葉は、更に続きました。
お父さんに教わった必勝法があるからね
あれはね、最強なんだよって。
とても楽しそうに、あなたと過ごした時間を振り返ったあの子は、
あなたに教わった戦法を話して聞かせてくれました。
なるほど、なるほど、と、相槌を打つ私の耳に届いたのは、
あの子だけが知っているあなたと2人だけの時間。
あの子の楽しそうな声を聞きながら、
今よりもずっと幼かったあの子とあなたが、
楽しそうにオセロをしている姿が、ふと、目に浮かびました。
思い返せば、あの子が小学生の頃に、一度、
オセロに夢中になった時期がありましたっけ。
まだ声変わりをする前の、高い声で笑うあの子と、
少しだけ手を抜いて、負けた!って、
悔しそうに笑うあなたの声が、聞こえたような気がしました。
いつの日か、やがてあの子が、お父さんになったのなら、
我が子にも、オセロの必勝法を教える日が来るのかも知れません。
お父さんのお父さんが教えてくれたんだよ
きっと、こんなふうに、
あの頃のあなたがあの子にくれた時間は、大切に、受け継がれていくのでしょう。
あなたが何処にいても、
あなたがあの子にくれた時間は、消えてなくなったりはしない。
あなたがあの子にくれた時間はきっと、
ずっと、この世界に、受け継がれていくんだね。