拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの場所の続きの景色

あなたへ

 

いつか、あの場所に行ってみたい

 

ひとりで散歩に出掛けるようになった私が、

やがて、こんなことを考えるようになったのは、いつのことだっただろう。

 

あの場所。

それは、いつかのあなたが連れて行ってくれた場所です。

 

あなたは、覚えていますか。

 

Sボードに嵌っていたあの頃、あなたが連れて行ってくれた川沿いの堤防。

舗装されていて、人通りのないあの場所は、Sボードをするには、最高な場所でした。

 

家から、そう遠くはないあの場所ですが、

ずっとそこへ行くことに躊躇っていたのは、

道が、よく分からないからという理由からでした。

 

とても狭い道を通らなければ辿り着くことの出来ないあの場所への途中で、

もしも道に迷ってしまえば、私はきっと、

引き返すことなど出来ずに、途方に暮れてしまうのでしょう。

だってほら、私の運転技術は、ちょっと、アレだから。

 

そうだ

あの場所へ、歩いて行ってみようって、

こんなことを思い立ったのは、先日のこと。

水筒なんかを準備して、

ちょっとした冒険に出掛ける気分で家を出発したあの日は、

青空が広がり、とても暖かな日でした。

 

歩いてみると、家からは、そこそこに距離がありましたが、

車では行くことの出来ないルートを見つけました。

道に迷うことなく、堤防へと辿り着くことが出来ましたよ。

 

この道のずっと先に、

あの頃のあなたが連れて来てくれた場所があるんだな。

 

どこまでも続く道を、のんびりと歩きながら、

やがて、あの頃、家族3人で見ていた景色を見つけた私は、

そっと目を閉じてみました。

 

Sボードに乗ったあなたが、嘘みたいな転び方をした姿と、

私を褒めてくれたあなたの声。

 

小学生だったあの子が、上手にSボードに乗る姿。

 

あぁ、疲れた

なんて言いながら、アスファルトに寝転んだあなたの姿。

 

そして、

家族3人の笑い声。

 

目蓋の向こう側に見えたのは、あの頃の家族3人の笑顔でした。

 

胸の奥が痛むのに、なんだか、笑ってしまったのは、

あの日のあなたのせい。

だって、あなたったら、

物凄く、わざとらしい上手な転び方をするんだもの。

 

目蓋の向こう側へ僅かに手を伸ばしてみたけれど、

そこに、あなたの温もりを見つけることは出来ないままに、

あの日、ここにいたあなたは、

また私を笑顔にしてくれました。

 

そこにいるあなたに、笑顔を向けると、

しっかりと、目を開いて、目の前に続く道を見つめてみました。

 

もしも、あなたと出会うことがなかったのなら、

私は、この道の続きの景色を知ることはなかったのでしょう。

 

何処まで歩いて行っても、

とても静かで、空が綺麗に見える場所。

 

あなたが連れて来てくれた場所の続きに見えたのは、

更に、視界が広がって、

ずっとずっと、遠くまで見渡すこと出来る、とても美しい景色でした。

 

あなたと並んで歩くことは、もう出来ないけれど、

あなたと出会うことが出来たから、

知ることが出来ました。

 

あの場所の続きに、こんなに素敵な景色があることを。

 

 

 

www.emiblog8.com