あなたへ
あれから、時々、思い出していた、
あの不思議な建物の話を、今日は、あなたにも話してみたいと思います。
先日出掛けた、川沿いの堤防。
あの場所の続きの道で、実は、不思議な建物を見つけました。
敷地内の雑草が伸び、手入れのされていないその様子から、
恐らくもう、何年も、
誰もそこに足を踏み入れてはいないことが伺える、とても古い建物です。
建物を見つめたまま、目が離せずに、
少しの間、立ち止まってしまったのは、
初めて目にした古い建物であるはずなのに、
私の中に、
何故だか、懐かしさのような不思議なものを感じたからでした。
遥か昔、建物の中へと入ったことがあるような、
そして、敷地にある庭で、遊んだことのあるような、
こんな不思議な気持ちでした。
あの場所へ行ってからの私は、
時々、あの不思議な建物のことを思い出しては、
この記憶の何処かに、あの建物についての記憶があるだろうかと、
何度も探してみましたが、
結局、私の中には、何も答えを見つけることが出来ませんでした。
何故だか、強く惹きつけられるような気がする不思議なあの建物は、
一体、何だったのでしょうか。
インターネットを使えば、
あの建物についてを知ることが出来るのかも知れないと、
ふと、こんなことを考えましたが、
検索ボタンを押せないままに、
調べることを辞めることにしました。
廃墟。
そう分類される場所には、少なからず、
何かのエピソードが存在するものではないかと、考えたからでした。
万が一、あの建物に、怖いエピソードが隠されていたのなら、
怖がりな私はきっと、
あの場所へ行くことが怖くなってしまうでしょう。
あの建物は、このまま、不思議な建物として、
私の胸の中へと留めたまま、
あの場所の続きは、私にとっての、
ただ大切な場所のままにしておこうと思います。