あなたへ
最近、携帯電話の調子が良くないんだよね
こんなあの子の声が聞こえて来たのは、
秋の爽やかな風を感じるようになってから、どれくらいが経った頃だったでしょうか。
iPhoneの新しい機種が発売され、絶妙とも言えるタイミングでのあの子の言葉に、
なんだか笑ってしまいましたが、
今の携帯電話に替えてから、2年以上が経ちました。
買い替えを先延ばしにしたところで、きっと、良いことなど、何もないのでしょう。
今回は、あの子の分だけ携帯電話の買い替えをすることにしました。
お母さん、ありがとう
本当にありがとう
満面の笑みで、何度も嬉しそうに、
こんな言葉をくれたのは、一昨日のあの子です。
インターネットで予約をしてから、少しだけ待ちましたが、
無事に、新しい携帯電話が届きました。
嬉しそうに、携帯電話を眺めてみたり、
カメラを起動させては、感動したり。
とても喜ぶあの子の姿に、私までもが、なんだかとても嬉しくなりました。
見せて?見せて?
あの子と一緒に、真新しい携帯電話の画面を見つめながら、
ふと気が付いたのは、これが最後なんだということでした。
今、あの子の手の中にある、真新しい携帯電話を使い込み、
いつの日か、買い替えの時期が来る頃には、あの子はもう、社会人です。
次の買い替えの時期を知ることもなければ、
新しい携帯電話を手に喜ぶあの子の姿も、私は、見ることはないのでしょう。
そっか。これが最後なんだな。
ほんの少しだけ込み上げる寂しさから目を背けるように、
真新しい携帯電話を手に喜ぶあの子の笑顔を見つめてみました。
素直に喜びを表に出して、
屈託なく笑うところが、あの子の素敵なところです。
次の携帯電話の買い替えの時も、その次も、
ずっと変わらずに、何処かで、
こんなふうに笑っていてくれたらいいなと願いながら、
そっと、あの子の笑顔を胸に焼き付けました。