拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

恵方巻

あなたへ

 

えー?もう!ガッカリだよ!

 

こんな声を上げながら、大袈裟なくらいに項垂れたのは、

先日の、節分の日のあの子です。

 

始まったばかりの新しい生活に、まだ、時間の流れを上手く掴めていない私は、

あの日、仕事帰りに、節分豆と、恵方巻を買って帰りました。

 

今日は、節分だから豆を撒こうね

恵方巻も買ってきたよ

 

こんな私の言葉に、

あの子は項垂れて、ガッカリとした姿を見せたのです。

今年は、手作りの恵方巻じゃないの?って。

 

あなたを見送り、毎年の節分には、

恵方巻を手作りするようになった我が家では、8年振りの購入になります。

 

料理が苦手な私が作るものよりも、

ずっと豪華なものを買ってきたつもりでしたが、

項垂れたままのあの子は言ったのです。

豪華かどうかが問題なのではなく、誰が作ったのかが問題なのだと。

 

新しい生活は、日々、慌しく過ぎて行きますが、そんな中で、

私が思っていたよりもずっと、

毎年の恵方巻を楽しみにしていてくれたあの子の気持ちを知ることが出来ました。

 

ごめんね

じゃぁ、今度作るからね

 

それはね、

クリスマスを過ぎてからクリスマスケーキを食べるのと同じなんだよ

今日じゃないと意味がないの

 

じゃぁ、来年は絶対に作るよ

 

えぇ!1年後じゃん!

嫌だよ

今度、作ってよ

 

それじゃ、意味がないんでしょう?

 

もう、意味なんてなくても良いよ

 

あの日の私たちは、こんなやりとりをしながら笑いました。

 

日常の中の何気ない時間ですが、

私にとっては、かけがえのない大切な時間。

 

あの日、あの子と一緒に笑った時間を思い出しながら、

今日は、約束通り、恵方巻を作ることにしましたが、

課題をしながら家にいたあの子が、急遽、巻いてくれることになりました。

 

2人で笑いながら、恵方巻を作った今日の時間も、大切な宝物。

慌しさの中にも、

幸せのカケラをまたひとつ、拾い集めることが出来ました。

 

今夜は、あなたの場所にも、恵方巻のお供えを。

少し、遅れてしまいましたが、あなたも、喜んでくれたでしょうか。

 

あの子が巻いてくれた恵方巻。

とても上手に出来ていましたね。