あなたへ
不意に襲ってくる空虚さに、こうして向き合うことは、
これで何度目だろう。
あなたに手を合わせて、
遺影の中で微笑むあなたの顔を、じっと見つめたまま、
あなたの声を、温度を思い出していました。
どんなに上手に笑えるようになっても、
決して、誰にも埋めることの出来ない空虚さを、私の中に見つけては、
胸に手を当てたまま、その空間を確認するのは、
これで何度目になるのだろう。
あの夏から、
私の胸の中にポッカリと空いてしまった空間は、
時間と共に、別の何かで埋まっていくのかも知れないと、
そんなふうに考えていたこともあったけれど、
あの夏から何年が経っても、大きさも、形も、少しも変わることなく、
私の胸の中にそれは存在し続けているよ。
肉体を持たないあなたは、今、そこにいるのでしょうか。
酷く痛む胸の奥に見つけるのは、
いつでも、あなたの笑顔と温もり。
不意にあなたを探しては、疼く胸の痛みに手を焼きながらも、
ただ、あなたを想う時間の中には、
愛おしさにも似た感情さえ、見つけてしまうんだ。
此処から先へ、どんなに歩んで行こうとも、私はきっと、何度でも、
あの夏のあなたに手を伸ばしてしまうのでしょう。
あなた以外に埋めることの出来ない空間に、ただ身を委ねながら、
私は、この先も、
この痛みを大切に抱き締めたまま、歩んで行くよ。