あなたへ
今日のこちらでは、冷たい雨が降り、
それはやがて雪へと変わっていきました。
厚い雲に覆われた空を見上げて、あなたの名前を呼んだ私の声は、
あなたのところまで届いたでしょうか。
私はこの世界でまたひとつ、無事に年を重ねることが出来ました。
涙の拭い方さえ分からないまま、
ぼやけた視界の中で、
ただ、あなたの温もりだけを探し続けていたあの夏の私は、
あれから、ひとつずつ年を重ねながら、自分のペースで歩めるようになりました。
どんなに転んでも、涙を拭いて、
自分で立ち上がる術を身に付けたのは、いつの頃からだっただろう。
あなたを見送ってから、8回目の誕生日。
今日の私は、ほんの少しだけ、いつのも日常から離れて、
空から落ちる雪を眺めながら、
静かに、あなたを見送ってから重ねた年の数を振り返りました。
4つ年上だったはずのあなたを追い越して、
私は今日、あなたの4つ年上になったけれど、
きっと私は、どんなに年を重ねようとも、
敵わないものをたくさん持ったあなたを目標に、歩んで行くのでしょう。
だからきっと、何処かで見ていてね。
この年齢の私も、あなたにも見せてあげたい素敵なものを、
たくさん見つけて生きて行くからね。
雪を降らす厚い雲の向こう側、
きっといつでも晴れた空を見ているあなたへ。
あの夏のあなたの側にいた私は、
今日、あなたよりも4つ年上になったよ。