春の風を覚えていますか
春の色を覚えていますか
春の匂いを覚えていますか
その髪を揺らす爽やかな空気を
その瞳に映る鮮やかさを
鼻を擽る甘い香りを
覚えていますか
一緒に過ごした5番目の春
玄関に並んだ小さな靴
庭先に転がった緑色のボール
見つけたものを指差す小さな手
あなたの後ろをついて歩く
小さな足音を覚えていますか
その足元に纏わりつく
小さなあの子を抱き上げて
語りかけるその声は
世界でいちばん優しい声でした
あなたのその柔らかな声も表情も
私は今でもよく覚えています
あなたが笑うからあの子が笑う
あの子が笑うからあなたが笑う
楽しそうな2人の笑い声に耳を澄ませては
ずっとこんな毎日が続きますようにと願ったあの頃の私は
あなたに何を伝えることが出来たでしょうか