拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

夏の匂いを嗅ぎながら

あなたへ

 

夏の匂いを嗅ぎながら、

あの夏の中にいた私を思い出していました。

 

あの夏の、

纏わり付くような温度を知らないあなたと過ごした時間。

 

きっと間もなく、一緒に家に帰れると、そう信じて、

何も疑わずに見つめたベッドの上のあなたの笑顔。

 

私は、絶対に強くなどならないと俯いたこと。

 

この手の温もりを絶対に忘れないと誓って、

まだ、温かかったその手を離した瞬間。

 

あれからの私は、

もう、此処から一歩足りとも歩みたくはないと座り込んで、

あの夏の中に留まろうとしました。

 

あの夏を過ぎて、

次の季節が巡ってきても、

その次の季節が巡ってきても、

あなたがいた夏に、必死に手を伸ばして、

決して戻ることの出来ない時間の中に帰ろうとしました。

あなたがいない時間など、見たくはないと。

 

夏の匂いを嗅ぎながら、

あの夏の中にいた私を思い出していました。

 

私だけが止まったままだった時間。

あの頃のことを思い返せば、

これまでずっと、そんなふうに感じていたけれど、

本当は、違ったのかも知れません。

 

得体の知れない何者かに追い立てられるような焦燥感を感じながらも、

あの夏にいるあなたに手を伸ばしては、

泣いてばかりいたあの頃の時間の中にいた私は、

そんな自分と、ちゃんと向き合っていたのだと思いました。

 

それは、前に歩んできたことと同じなのかも知れません。

 

どこが前であるのかが分からなくても、

私はちゃんと、歩み続けていたのだと思いました。

今の自分へと成長するために。

 

夏の匂いを嗅ぎながら、

私は初めて、これまでとは別な視点から、

自分が歩んできた道のりを見つめることが出来ました。

 

あの頃のことを思い返せば、胸が苦しく、

大きく息を吸い込まなければ、

涙に溺れてしまいそうにもなるけれど、

あの時間と懸命に向き合ったからこそ、

今の私が此処にいるのだということに、気付くことが出来ました。

 

一見して、ただ立ち止まっているようにしか感じられなくとも、

人生の中に、止まってしまう時間など、本当は存在しないのかも知れません。

 

人は此処に生きる限り、年齢など、全く関係なく、

毎日、毎日、ほんの少しずつ、

成長をし続けていくものなのかも知れませんね。

 

纏わり付くような暑さを感じながら、

どうしてこんなにも涙が溢れて来るのか、その明確な理由も分からないままに、

きっと、何処かで笑っていてくれるあなたと、

あの夏の中にいた私を想いました。

 

 

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