お盆の最終日の早朝に
ご先祖様を送りに行っていた祖母の姿を
ふと思い出した
お盆様は朝早くに帰るんだよ
幼い頃に
祖母が話して聞かせてくれた
あの言葉は
きっと本物なのだろう
早くに伴侶を亡くした祖母も
毎年
肌で感じていたのかも知れない
愛する人が
お盆初日の早朝に
そっと帰ってくることも
お盆最終日の早朝に
静かに向こう側へと帰ってしまうことも
だからきっと祖母は
お盆の最終日になると
必ず早起きをして送りに行っていたのだと思う
幼かった頃の記憶を反芻しながら
彼もお盆様という類に属していることに
ふと気付く
彼は向こう側の存在であり
私たちとは違う
この世界に存在するための肉体を持たない彼が
此処に留まり続けることは
もう出来ないのかも知れない
8月15日の夜は
とても寂しくなる
彼に手を合わせながら
思わず呟いてしまうんだ
また今年も静かに帰ってしまうんだねと
明日の朝
きっと感じることになるであろう
あの空気感を想像するだけで
落胆してしまうけれど
少しだけ見方を変えてみれば
それは向こう側からの
最大の配慮であるのかも知れない
私たちがスムーズに
いつもの日常生活に戻れるようにと
だから今夜は泣かないよ
だからせめて
今夜だけは手を繋いで眠りたい
今夜は
ずっと側にいてね