あなたへ
春の爽やか風の匂い
夏の熱が溶け込んだ空気の匂い
秋の涼しい風の匂い
冬の澄んだ空気の匂い
かつては当たり前の日常の中の一部だったはずの季節の匂いに、
愛おしい気持ちを抱くようになったのは、いつからだっただろう。
そこに季節の花など咲いていなくとも、
季節には異なった匂いがあるのだと、改めて感じながら、
それらはこの世界に存在する美しいものの一部であると、
そんなふうに気付かされたのは、いつのことだっただろう。
時間を見つけては公園へと出向いて、
そこにある季節の匂いを感じる時間は、
いつの頃からか、私なりのこの世界の楽しみ方のひとつとなりました。
公園の一画、
誰もいない場所でマスクを外して、
ただ空気の匂いを嗅ぎながら、季節を感じてみる。
それは今の私たちにとって、
とても贅沢な時間であるとも言えるのかも知れません。
まだまだ日中は暑い日も多いこちら側ですが、
もう、真夏の匂いは此処にはありません。
秋の始まりの匂いを吸い込んで、空を見上げてみれば、
思い浮かぶのは、あなたの笑顔。
そちら側のあなたは、今、
どんなものに囲まれて過ごしていますか。
そちら側のあなたの世界も、
素敵なもので溢れていますように。