拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

虫との遭遇という視点から

あなたへ

 

夏は大好きだけれど、

夏の公園も、夏の自然の中も、勿論、好きだけれど、虫は苦手。

 

自然に囲まれた静かな場所へと好んで散歩に出掛けながらも、

虫がいないかと、ドキドキしてしまうのもまた事実。

 

だってほら、特に自然の中にいる彼らって、存在感が半端ない。

一般家庭用なのか、業務用なのか。

例えばそのくらいに差があるように見えるのは、

彼らが育った環境が大きく影響するからなのでしょうか。

 

夏に散歩へ出掛ける時は、実はいつでもちょっとだけ、

ドキドキしながら出掛ける私ですが、

改めて、これまでのことを振り返ってみると、

ひとりで散歩に出掛けた私が虫に驚いて、

その場を去ることが一度もなかったのは、偶然だったのでしょうか。

 

虫との遭遇という視点から、

あなたを見送ってからのこれまでを振り返ってみると、

思えば私は、ひとりでいる時には殆ど、

虫とは遭遇したことがないことに気が付きました。

 

私がひとりであの試練を乗り越えたのは、4年前。

 

あの日、家の中に突如として現れたアレは、

恐らくこの辺りで育ったのであろう一般家庭用サイズではありましたが、

虫が苦手な私にとってのあの日の戦いは、非常に困難を極めました。

 

あの試練を最後に、私は、

家の中に入ってきた虫を退治した覚えはありません。

 

いつかの夏のセミ事件では、

ベランダにひっくり返っていたセミへの気遣いのつもりが、

予期せぬ反応に驚かされてしまいましたが、

こうして、改めて振り返ってみると、私がひとりでいる時に、

虫と戦わなければならない事態に遭遇したのは、

この2回だけであったように思います。

 

ですが、こうして改めて振り返ってみると、とても不思議です。

 

4年前に、家の中に入ってきたアレ。

即ち、コオロギとの戦いへと挑んだあの日のコオロギは、

何故だか微動だにせず、私が勇気を出すのを、

そこでじっと待っていたようにも思えました。

 

あの日、右往左往していたのは寧ろ私の方でした。

故に、勇気さえ持つことができれば、

あんなに時間を掛けることなく、速やかに戦いを終えることが出来ていたのでしょう。

 

これまでの私が戦ったのは、

どちらも全く動かないものであったことに、

今更ながら、気付くことが出来ました。

 

普通に動き、早くしなければ何処かに隠れてしまうであろう虫が現れるのは、

決まって、あの子が家にいる時。

 

特殊能力が備わった私の方が、虫を見つけるのは先だけれど、

虫が出たと騒げば、必ずティッシュペーパーを持ったあの子が惨状して、

どこ?なんて言いながら、速やかに虫を取ってくれるのです。

 

ねぇ、あなた。

私ね、気付いちゃった。

 

きっとね、私が散歩に出掛けた時には、

虫がいない道をちゃんと選べるようにって、

実は、私のほんの少し先を、あなたが歩いてくれているんだろうなって。

ほら、あの時の夢の中みたいにさ。

 

そしてきっと、あのコオロギ事件の時には、アレが動かないようにと、

実はあなたがこっそりと、捕まえてくれていたのではないかと思いました。

 

半泣きで、あなたの名前を呼び続ける私を、可笑そうに眺めながらも、

あの時のあなたは、声を掛けてくれていたのかも知れませんね。

ほら、動かないから大丈夫だよって。

 

そうして、きっとあの子が家にいる時は、

後は任せた!なんて、あの子にバトンタッチして、

あなたは、またいつもと同じように、穏やかな顔で、私たちを見守ってくれているの。

 

あの子が家にいる間に我が家の中に虫が出る時は、

少しもタイミングがずれることはありません。

 

例えば、お風呂やお手洗いのタイミングだってあるはずなのに、

その時はいつでもベストなタイミングでやって来るのです。

 

こんな視点から見てみると、

実は私は、私が思っていたよりもずっと、あなたとあの子から守られて、

穏やかな毎日を過ごしてきたのだと思いました。

 

2人で虫から私を守ってくれていることは、

実はあの頃から、何も変わってなどいなかったんだな。

私は、幸せなんだなって。

 

ただの偶然のように見えても、実はよく出来た必然。

あなたを見送ってからの私は、

こんな目に見えない不思議なものを、幾つ、見つけてきたでしょうか。

 

ほんの少しだけ見方を変えてみれば、いつでも新しい視点と共に、

様々なものが見えてくるような気がします。

 

こちらでは、先日より急に寒さを感じられるようになりました。

夏が大好きな私は、

やっぱり少しだけ寂しいけれど、全く別な視点から季節を感じてみれば、

なんだか少しだけ、ホッとしてしまいました。

 

虫を素早く察知するという、私が持つ特殊能力を、

また暫くは使わずに済むのだな なんてね。

 

 

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