あなたへ
俺の手、見て?
マメが出来たんだよね
お父さんと同じでしょう?
こんなあの子の声が聞こえてきたのは、先日のことでした。
嬉しそうに自分の手のひらを眺めていたあの子が話してくれたのは、
実はあなたの手に出来ていたマメに憧れていたという話でした。
仕事柄、よく、手のひらにマメを作っていたあなた。
あなたは、いつもマメが出来てしまうことを気にしていたけれど、
そんなあなたを見つめていたあの頃のあの子は、
実はこっそりと、憧れを持っていたそうです。
あの子の言葉には、なんだか笑ってしまいましたが、
あの子曰く、男らしくて格好良いのだそう。
どんな些細なところにも、
あの子はあなたに憧れて育ってきましたが、
まさか、手のひらに出来たマメにまで、
あなたと同じだと喜ぶだなんて、想像も出来ませんでしたね。
あなたは仕事でマメが出来ていたけれど、
あの子は、日々の筋トレが原因で、マメが出来ているようです。
でもさ、マメが出来ていると、少し不便なんだよね
お父さんが気にしていたのが、よく分かるよ
嬉しそうに手のひらを眺めていたあの子は、
こんな話も聞かせてくれました。
憧れを手にした時に、初めて知る苦労というのもあるのでしょう。
あの夏のあの子は、随分と成長し、
初めて、あの頃のあなたの苦労を知ったようですよ。