拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの日食べたアップルパイの味

あなたへ

 

涙が零れ落ちないように、

口いっぱいに詰め込んだアップルパイの味は、

私の中に強烈なインパクトを残したまま、

決して消えない痛みとなって、私の中に止まり続けました。

 

あの時、ごめんね。

 

あなたに、そう伝えることが出来ないままに、

アップルパイを口いっぱいに詰め込んだのは、

あなたを見送ってから、どれくらいが経ってからだったでしょうか。

 

私の胸の奥深くまで、痛みを刻み付けたあの日のアップルパイの味は、

やがて、未来の私に、

ほんの少しの勇気を持たせてくれる痛みへと変わっていったのだと思います。

 

あの時、こんなことを伝えることが出来て良かった。

 

あれからの私は、少しずつ、

そう思える方を選ぶことが出来るようになっていきました。

 

時には、ちょっと照れてしまうような恥ずかしいことも、

勇気を出して伝えてみる。

 

振り返ってみれば、

小さな、あの時良かったなを積み重ねられるようになった私は、

後悔を残すような選択をしないようになりました。

 

変わりゆく景色と同じように、

人とのご縁も変わりゆくのが人生というものでもあるのでしょう。

 

またいつかね。

 

こんな前向きな言葉と笑顔を最後に、

そこで途絶えてしまうご縁もあるけれど、

途絶えてしまったご縁もまた、

この人生の中に新しい色をくれた大切なご縁。

 

今日の私は、この人生の中へ関わりを持ってくれた、

大切な人たちのことを思い出しながら、

あの時も、あの時も、こんなことを伝えることが出来て良かったなって、

こんな曇りのない気持ちで振り返っていました。

 

大切な人の手を離す痛みを教えてくれたあなた。

 

あなたに伝えたかった、

あの時ごめんねは、もう、伝えることは出来ないけれど、

もしもこれも学びだと言うのなら、

決して消えることのない痛みを知り、

私は学ぶことが出来たのだと思います。

 

だからね、

 

だから、

 

そう。

 

今の私は、あなたに、ごめんねではなくて、

ありがとうって伝えたいなと思いました。

 

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